2021 Fiscal Year Research-status Report
DNAポリメラーゼζ(ゼータ)の変異生成・抑制における損傷特異性
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19K12349
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
石井 雄二 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 室長 (70544881)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DNAポリメラーゼζ / 損傷乗り越え複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境化学物質に対するDNAポリメラーゼζ(Polζ)の変異生成・抑制の分子機構を明らかにするため、種々のDNA損傷を引き起こす腎発がん物質をPolζの複製忠実度を低下させたPolζノックイン(KI)gpt deltaマウスとgpt deltaマウスに投与し、レポーター遺伝子変異解析をすることでPolζの複製忠実度の低下が突然変異に及ぼす影響を検討した。本年度は令和2年度に実施した臭素酸カリウムを投与したPolζKI gpt detaマウス及びgpt deltaマウス腎臓のgpt assayから得られた、gpt変異体コロニーの変異スペクトラム解析を行い、酸化的DNA損傷に対するPolζの働きを検索した。その結果、臭素酸カリウム投与群では一塩基欠失の頻度の増加が認められたものの、遺伝子型間に差は認められなかった。また、大型の欠失変異を検出するSpi- assayにおいても変異頻度の上昇傾向が認められたものの、遺伝子型間に差はみられなかった。以上から、Polζの複製忠実度の変化が酸化的DNA損傷を有するDNAの複製反応に及ぼす影響は乏しいと考えられた。また、腎臓においてDNA二重鎖切断が生じるオクラトキシンAを、PolζKI gpt deltaマウスとgpt deltaマウスに5、2.5又は1.25 mg/kg体重/日の用量で28日間投与し、3日後の腎臓についてgpt assay及びSpi- assayを実施した結果、両assayにおいて突然変異頻度の変化は認められず、遺伝子型間の差はみられなかった。以上から、オクラトキシンAが誘発するDNA損傷に対して、Polζは作用しないことが明らかになった。これらの結果から、Polζは嵩高いDAN損傷に対する塩基挿入と、それによって生じたミスマッチ末端からの伸長反応に働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究結果から、Polζは多くのDNA損傷が生じた際に作用することが示唆されたことから、遺伝子型間に変化が見られたルビアジンについて、より多くのDNA損傷が生じる実験系を用いて確認試験を実施しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
混餌投与に比して、一時的により多くのDNA損傷が生じると考えられる強制経口投与により、ルビアジンを40、200又は1000 mg/kg体重/日の用量でPolζKI gpt deltaマウスとgpt deltaマウスに3日間投与し、28日後の腎臓を採取する。腎臓についてgpt及びSpi- assayによる変異原性評価を実施し、変異体頻度及び変異スぺクラムについてPolζの複製忠実度の低下による影響を明らかにする。さらに、令和元年度の実施した28日間の混餌投与試験と比較し、ルビアジンが引き起こすグアニン及びアデニンの損傷に対するPolζの働きを比較する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大防止のため、参加を予定した学会がWeb開催となり旅費の支出がなくなった。また、令和4年度においてルビアジンに対するPolzの作用についての確認試験を行うため。
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