2021 Fiscal Year Annual Research Report
多層カーボンナノチューブにより惹起されるエフェロサイトーシス阻害機構の解明
Project/Area Number |
19K12351
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
田部井 陽介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40555083)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多層カーボンナノチューブ / 好中球 / アポトーシス / エフェロサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンナノチューブは、エレクトロニクス、エネルギー、バイオなど多岐にわたる分野での応用が期待されている一方、繊維状の微小物質というその形体的特徴から、ヒトへの健康への影響が懸念されている。本研究では、好中球様細胞に分化したHL-60細胞を用い、カーボンナノチューブが及ぼす影響について解析を行った。長さや太さが異なる多層カーボンナノチューブを好中球様HL-60細胞に曝露したところ、ミトコンドリア膜電位の低下や、カスパーゼ-3の活性化等、アポトーシス経路活性化を示す結果が得られた。一般に生体内ではアポトーシスを起こした好中球はマクロファージによる貪食作用によって速やかに除去される。これをエフェロサイトーシスと呼ぶ。そこで、多層カーボンナノチューブを暴露した好中球に対するマクロファージの貪食作用を解析したところ、マクロファージによるエフェロサイトーシスを回避させる多層カーボンナノチューブが存在することが見いだされた。これら、多層カーボンナノチューブが好中球様HL-60細胞に及ぼす影響を解析したところ、効率的なエフェロサイトーシスに必要とされる、ホスファチジルセリンの細胞外への提示やCD47の発現の低下が破綻していることが明らかとなった。これら現象の破綻の原因を探るべく、詳細に解析したところ、エフェロサイトーシスを回避させる多層カーボンナノチューブ暴露した細胞では、サイトゾル中のカルシウム濃度が極端に低下していることが見いだされた。さらに、このサイトゾル中のカルシウム濃度の低下により、フリッパーゼの活性が上昇し、ホスファチジルセリンの細胞外への提示が抑制されることも見いだされた。以上の結果から、多層カーボンナノチューブは、好中球の細胞内カルシウム濃度を低下させ、細胞外へのホスファチジルセリン提示を抑制することにより、エフェロサイトーシスを阻害を引き起こすことが明らかとなった。
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