2019 Fiscal Year Research-status Report
水域生態系における薬剤耐性菌の伝播と感染メカニズムの解明への挑戦
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19K12357
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小林 由紀 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (80759457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 一彰 近畿大学, 理工学部, 教授 (40435532)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 自然河川 / 原生生物 / ワンヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,薬剤耐性問題は日本国内にとどまらず,世界的な大きな公衆衛生上の問題となっている.WHOではワンヘルスという概念を提唱しており,人間の健康は,人間だけに着目するのではなく,動物やそれを取り囲む環境にも配慮しなければならないというものである.感染症問題が重視される昨今,院内だけにとどまらず,動物や環境も含めて人間の感染症問題に取り組んでいかねばらならない.しかし,環境中にも薬剤耐性菌が流出していることが考えられるにも関わらず,現状はほとんど研究例が乏しく,現況はほとんどわかっていない.そこで,本研究では,宇部市内を流れる真締川内の薬剤耐性菌の動態を調べることを目的とした.さらに,薬剤耐性菌がどのような場所で生息し,そのような経路をたどって他の生物を経由していくのかを探索することを目的とした. 手法は培養による方法と非培養法(分子学的手法)により検出する.河川水の水質を現地で測定するとともに,各地点で採水し,試水の一部を培地上で培養,一部をDNA抽出し細菌の種同定や保持する薬剤耐性遺伝子を検出する.また,薬剤耐性菌が他の生物にどのように伝播するかを調べるために,細菌の捕食者である原生生物を使用し,薬剤耐性菌を捕食による消化率を室内実験で調べる. この研究により,自然河川においてどのような薬剤耐性菌がどのような環境で生息するか,またその細菌がどのような経路をたどって他の生物に伝播するかを明らかにする結果を提供したい.環境中の薬剤耐性菌については本国ではあまり報告されていない.しかし既に東南アジアでは多くの報告例がある.本国でも現状をまずは把握し,これらの耐性菌がヒトに感染することを防ぐよう対策をたてる研究になる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度6月に研究分担者と研究計画を立て,河川調査地を決定した.8月から10月に月3回の河川調査を実施し,現地では水質計測(水温,電気伝導度,溶存酸素濃度,pH)を測定し採水した水を使って培養法,非培養法を用いて耐性菌検出を行った.0.2マイクロメーターのフィルターに河川水をろ過し,そのフィルターを,薬剤(アンピシリン,テトラサイクリン,セフォタキシム)が100ug/ml濃度入ったマッコンキー培地に載せ2日間培養し,コロニー数(CFU/ml)を計数した.また検出された耐性菌が大腸菌であるか否かを明らかにするため,コロニーPCRを行った結果,3コロニー中2つが大腸菌であった.河川水中の薬剤耐性菌は,上記した薬剤3種の中ではアンピシリン耐性菌が最も多く,続いてセフォタキシム耐性菌も多く検出された.
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響により,河川調査が遅れてしまったが,令和2年度5月より河川調査を再開した.前年度同様の実験とともに,昨年できなかった,1)検出されたコロニーの菌種同定(16S rRNA による塩基配列決定),2)検出されたコロニーのプラスミド内の耐性遺伝子検出,を試みる予定である.また,河川水の物理的化学的,生物学的環境要因としてサンプルをストックしている,クロロフィル濃度,炭素量,窒素量,リン量なども測定を進める.令和3年の3月の日本細菌学会,日本生態学会で発表する予定にしている.
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Causes of Carryover |
令和2年度は令和元年度に購入した機器と器具により実験を継続する.令和3年度は最終年度であるとともに,年度初めに新しく室内実験を行う予定であるため,物品を購入する予定である.また国際学会に出席し発表を行う予定であるため,次年度に予算を置いている.
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