2020 Fiscal Year Research-status Report
水域生態系における薬剤耐性菌の伝播と感染メカニズムの解明への挑戦
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19K12357
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小林 由紀 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80759457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 一彰 近畿大学, 理工学部, 教授 (40435532)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 多剤耐性菌 / 自然河川 / ESBL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では真締川流域を調査地とし,グラム陰性桿菌を対象とした水環境中に存在する多剤耐性菌を検出,および分離されたすべての菌の相同性検索を目的とした.採水した河川水を滅菌水で希釈し,フィルター上に濾過し,フィルターは,薬剤を添加していないマッコンキー寒天培地(日本製薬株式会社)上,アンピシリンナトリウム,セフォタキシムナトリウム,テトラサイクリン塩酸塩 を添加したマッコンキー寒天培地上にそれぞれ乗せ,30℃,48時間培養した.培養後のコロニー数をそれぞれ計測し,生菌数を求めた. (薬剤感受性試験)マッコンキー寒天培地上に生育したコロニーを全てピックアップし,ハートインヒュージョン培地に単離培養後,薬剤感受性試験に供した.滅菌済み10 % PBS にコロニーを懸濁させ,菌液の濁度をMcFarland 0.5に調整し,滅菌綿棒を用いてミュラー・ヒントン寒天培地に塗布した.その上に,7種類のディスクを置き,30℃,24時間培養後,阻止円を測定し,感受性を確認した.(菌種の同定)LB液体培地で30℃48時間振盪培養し,遠心して菌を回収後 DNAを抽出した. DNA抽出液を入れPCRを行った. 9PCR産物を1.5%アガロースゲル中にて増幅の有無を確認した.作成したPCR産物を精製し,塩基配列を決定しDDBJで相同性検索を行った.(ESBL/MBL確認試験)サンプルを,ESBL/MBLスクリーニング寒天培地上に播種した.30℃,24時間培養後,判定を行った. (結果)河川中から検出された菌30株全てにおいて多剤耐性菌であることが明らかとなった.また数株の菌はESBL産生菌であることが推測され,現在特異的なプライマーを用いてDNA解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は,河川中の薬剤耐性菌の検出および塩基配列決定は順調に進んでいる.一方薬剤耐性菌を捕食する原生生物の実験は,原生生物のセットアップ中であり,捕食実験は今月から始める予定である.原生生物の取り扱い,培養生育方法は既に取得済みである. また培地を変更して,より多くの環境中の細菌を採取し薬剤耐性菌の検出を試みるよう現在河川水,バイオフィルムの採取を行い培養を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定は主に2つである. 1)原生生物による薬剤耐性菌捕食実験.薬剤耐性菌を購入したのでそれを用いて,原生生物(paramecium)が薬剤耐性菌消化にどれくらい関与しているかを,室内培養実験で明らかにする. 2)令和2年度は河川中の細菌をマッコンキー培地に生育したものに限定して解析を進めた.しかしマッコンキー培地に生育する細菌は実際に存在する細菌のごく一部にすぎない.したがって今後は河川水のDNA解析を行い,マッコンキー培地では検出できなかった耐性菌を検出する.
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Causes of Carryover |
学会発表や研究打合せ等の参加を見合わせたり,オンライン会議に変更したため,旅費や宿泊費を使用しなかったため.
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