2020 Fiscal Year Research-status Report
High accuracy analysis of microplastic sources in the terrestrial and coastal environments
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19K12372
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中田 晴彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60311875)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 養殖施設 / 底質 / プラスチックごみ / 発生源解析 / プラスチック添加剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、マイクロプラスチック (MP)による環境汚染と生態系への影響が懸念されている。2020年度は、MPによる汚染現状の把握と発生源の解析を目的として、「水産養殖場周辺におけるMPの汚染現状の把握」に関する研究を展開して以下の結果を得た。 国内外の魚類・貝類等の養殖施設から底質試料を、また現場で使用されているプラスチック製漁具を採取した。分析の結果、国内では68試料中41試料から、国外では30試料中24試料の底質からそれぞれMPが検出された。MP濃度(中央値)は、20~118個/kg(乾燥底質)であり、養殖いかだ直下の底質と対照試料のMP濃度に顕著な差は認められなかった。その理由として、海面から底質へMPが移動する際、潮の満ち引きや海流の影響で広範に拡散されるためと考えられた。底質中MPの材質はポリエチレン (PE)の割合が最も高く、次いでポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)の順であった。一方、漁具の材質はPEやPP、PS、ポリエステル(PES)、ポリアミド(PA)であり、養殖場周辺には漁具以外にもMPの発生源が存在する可能性が伺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度よりMPの発生源に近い陸水環境の調査を行っており、熊本市内の江津湖底質から極めて高濃度のMPが検出されたことを報告した(恵良, 中田 (2020), 水環境学会誌, 43, 107-112)。MP汚染をさらに詳しく調べるため、同湖で採取した外来魚胃内容物中のMP蓄積とその摂取経路に関する研究を行っている。これまでに、外来魚のテラピア・オオクチバス(ブラックバス)・カムルチー(タイワンドジョウ)を50尾以上採集して、一部の試料については分析を終えた。 分析の結果、3魚種全ての胃内容物からMPが検出され、その頻度は雑食性魚類のテラピアが最も高かった。また、魚類の餌であるオオカナダモなどの植物からもMPが検出されており、試料1 kgあたりの濃度値は底質の約10倍高いことがわかった。今後さらに分析試料数を増やして、国内淡水魚におけるMP蓄積とその摂取経路の関係を詳細に調べる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の淡水魚と水草の関係を調べることに加え、水圏へのプラスチックごみやマイクロプラスチックの拡散と、添加剤の汚染に関する研究を推進していきたいと考えている。具体的には、①深海環境へのプラごみとプラスチック添加剤の分布挙動の把握、②地下水中のMP分布と発生源解析の2つのテーマに取り組む。 ①は日本近海の水深1,000 mを超える深海底のプラごみを海洋開発研究機構(JAMSTEC)と共同で採集し、その分布量と添加剤濃度を明らかにする。加えて、有害性の高い化学物質の海底負荷量を算出して、深海生物への影響を評価する。 ②は国内の地下水を分析してMPの存在と濃度分布を明らかにする。また、検出されるMPのポリマーの種類等から、陸上にある発生源を特定する研究を展開したい。得られる結果は、MPの環境負荷をピンポイントで削減可能な情報が含まれるため、学会や論文等で広く社会に情報を発信する。
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Causes of Carryover |
最終年となる次年度に、コロナ禍で実施出来なかった複数のフィールド調査を予定しているため、「次年度使用額(B-A)」が0より大きくなった。
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Research Products
(3 results)