2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of composting diagnosis method using microbial activity evaluated by numerical analysis of compost temperature
Project/Area Number |
19K12377
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
宮竹 史仁 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70450319)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 堆肥化 / 発酵診断 / 温度 / 熱発生速度 / 酸素消費速度 / 比増殖速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
良質な堆肥生産には、堆肥製造者が基本的な科学原理や適切な方法をよく理解していることが重要となる。しかしながら現状では、学術的知見が現場まで浸透しておらず、堆肥化が上手くいかない生産現場が多い。本研究では、研究者達が培ってきた基礎研究知見を生産現場で容易に浸透させるために、発酵工学的な指標による堆肥化の発酵診断プログラムを開発することを目的とし、特に平成31(2019)年度は堆肥化過程の温度データによる数値解析によって得られる熱発生速度や比増殖速度などの微生物活性の指標が、発酵診断プログラムの判定基準として有効な指標であるかを検証することを目的とした。 平成31年度の課題では、実験室内での小型堆肥化装置を用いて、異なる堆肥化条件の堆肥化実験ならびにこれまでに本研究室で蓄積された堆肥化実験データの解析を行い、特に日本でのバイオマス発生量が最も多い牛ふんの堆肥化に焦点を当て、それらの堆肥温度から数値解析で得られる熱発生速度や比増殖速度が分析された。さらにそれらの指標は、堆肥化微生物の指標である酸素消費速度などと比較され、発酵診断プログラムの判定基準としての有効性が分析された。 これらの実験データの解析により、堆肥化の重要なファクターである初期材料含水率と堆肥化過程での通気量の違いによって、堆肥の温度上昇時における熱発生速度と比増殖速度の数値やトレンドグラフのパターンに明らかな差異があることが見いだされた。とりわけ、熱発生速度はそれらの条件下における特定のパターン傾向を示すことが明らかとなり、発酵診断プログラムの判定基準として有効性があることが示された。また、比増殖速度においても一定の判断基準として有効であると考えられ、熱発生速度の補完的基準として利用可能であると考えられた。 以上のように、平成31年度の研究実施計画に基づき研究が遂行され、結果も十分得られていると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31(2019)年度の課題では、実験室にて小型堆肥化装置を用いて、異なる条件(材料、水分、通気量等)の堆肥化実験ならびに本研究室で保有している小型堆肥化装置による実験データの解析を行い、それらの堆肥温度から数値解析で得られる熱発生速度や比増殖速度を分析することで、発酵診断プログラムの基礎となる判定基準の学術的理論の構築を図った。また、それらの解析結果は、堆肥化の微生物活性の代表的指標である酸素消費・二酸化炭素排出速度等と比較することで、熱発生速度や比増殖速度の指標が発酵診断の判定として有効であるか検証された。 解析された実験データは牛ふんの堆肥化実験データだけでも100回以上の堆肥化分のデータであった。特に、牛ふん排出量は日本のバイオマス発生量の中で最も多く、また、畜産農家など現場的ニーズや早急な堆肥化の改善が必要なことから平成31年度は牛ふんの堆肥化における発酵診断プログラムの確立に向けて重点的に研究を行った。 これらの研究の結果、(1)堆肥化の最重要ファクターである初期材料含水率と堆肥化で施す通気量の違いによって、堆肥の温度上昇時における熱発生速度と比増殖速度の数値やトレンドグラフのパターンに明らかな差異があることが見いだされた。(2)熱発生速度は異なる初期含水率や通気量条件下において特定のトレンドパターンや数値の増減を示すことが明らかとなり、発酵診断プログラムの判定基準として有効性があることが示された。(3)比増殖速度は、熱発生速度よりもやや甘い判定基準になるものの、特定の初期含水率の水分域や通気量の範囲において有効であると考えられ、熱発生速度の補完的基準として利用可能であると考えられた。 以上のように、平成31年度の研究実施計画に基づき研究が遂行されており、研究分析の一部は令和2年度に関連した内容も含んでおり、当初の計画どおりに研究は進展していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究推進計画として、平成31年度に解析された熱発生速度や比増殖速度のプロファイルを堆肥化の良否で評価・分類し、各堆肥化条件における発酵良否との相関性を明らかにしてより詳細な発酵診断の基準を作成することを目的としている。さらに、実規模試験のデータを加えながら、発酵診断プログラムの大枠を構築したいと考えている。 しかしながら、令和2年度4月末現在で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、研究活動自体が全て停止している状態である。実験データの解析や堆肥化実験には学生アルバイトなどのスタッフの協力が不可欠であるが、現時点では令和2年度予定の研究計画の開始時期を見通すことが極めて難しい状況である。本研究課題の当初予定は平成31年度(2019年度)から令和3年年度(2021年度)の3カ年であるが、この新型コロナウイルスの感染拡大による状況によっては、本研究課題の1年延期(令和4年度(2022年度)まで)を想定する必要があると思われる。
|
Causes of Carryover |
(理由) 次年度の使用額として45,293円と比較的少額が生じた。これは実験データ解析のために学生アルバイトを依頼してたが、当初想定していたよりも早く終了し、その分のアルバイト代が次年度に持ち越されたためである。 (使用計画) 平成31年度(2019年度)は堆肥化の実験装置のガス校正等に予想以上の費用が掛かったため、「その他」の経費に計上して使用する予定である。
|