2019 Fiscal Year Research-status Report
菌類を利用した新規なゴム分解酵素の探索から有機化学的手法を用いた解析への構築
Project/Area Number |
19K12389
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
清水 由巳 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (50725124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香西 博明 関東学院大学, 理工学部, 教授 (00272089)
清水 公徳 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 教授 (40345004)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 担子菌類 / ゴム分解 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度までに、ゴム分解候補株であるブナシメジ、Physisporinus sp.を用いて、天然ゴム添加培地での培養時と、ゴムの代わりにグルコースを加えたグルコース培地での培養時に発現する遺伝子群を網羅的に解析した。本年度は、全ゲノム配列が解明されているブナシメジの遺伝子群について解析を行った。天然ゴム添加培地、グルコース培地の双方の培養で発現した遺伝子群を比較し、グルコース培地培養での発現量よりも、天然ゴム添加培地培養での発現量が2倍以上となる遺伝子、1,382遺伝子を選別した。これらの遺伝子配列を用い、遺伝子データベースのブラスト検索から遺伝子機能を予測した。その結果、リグニン分解酵素であるラッカーゼ、マンガンペルオキシダーゼをコードする遺伝子が含まれており、かつ、これらの酵素について、天然ゴム添加培地培養、グルコース培地培養を用いて酵素活性を測定したところ、ラッカーゼは2.5倍、マンガンペルオキシダーゼでは1.8倍、ゴム添加培地培養で高くなることが判明した。また、既知のリグニン分解酵素以外の酵素がゴム分解に関与することも考えられたため、これら1,382遺伝子の中から、細胞外分泌性のタンパク質をコードすると予想される遺伝子の検索を行った。signalPを用いて検索し、発現量の特に高い27個の遺伝子に着目した。これらの遺伝子の中には、ラッカーゼはもちろんのこと、ペクチンリアーゼ、麹菌が生プラスチック分解時に分泌する界面活性蛋白質ハイドロフォビン、そして、複数のグリコシドヒドロラーゼと相同性のある遺伝子が含まれていた。 他方、これら2菌種の合成ゴムへの影響を調べた。その結果、SBR、EPDMを添加した培地でもそれら2菌種は生育し、その培養物からゴム分解物と思われる物質を、NMR, FT-IR, TLCにより検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、ゴム添加培地で多く発現する遺伝子を、担子菌酵母であるCryptococcus neoformansの遺伝子発現ベクターを使ってクローニングし、C. neoformansの細胞を使ってゴム分解に関与する遺伝子を発現させ、タンパク質を得る予定であった。C. neoformans細胞への遺伝子導入は、パーティクルガン法を用いる。しかしながら、その装置に必要なヘリウムガスを入手できず、他の方法も検討する必要がでてきた。遺伝子のクローニングは、ブナシメジやPhysisporinus sp.のゲノムDNAを用いて進めていたが、ゲノムDNAにはイントロンが含まれているため、子嚢菌や大腸菌の細胞内では、その遺伝子を発現させてもタンパク質を合成させることはできない。そこで、ブナシメジやPhysisporinus sp.のcDNAライブラリーを作製し、目的遺伝子のクローニングを進めている。 他方、菌作用後のゴム分解物の検出については、固形ゴムに菌を作用させた後、ゴムサンプルを回収し、サンプルの表面に付着した菌を除去後、溶媒に溶かした。しかしながら、ゴムサンプルが溶媒に溶けず、ゴム分解物の検出が困難であった。現在、低分子量のゴム分解物が産生されていれば、培養液中に分散している可能性があると考え、培養液からのゴム分解物の抽出も試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴム分解関連遺伝子のクローニングと遺伝子産物の獲得は、ブナシメジやPhysisporinus sp.のcDNAライブラリーを作製し、目的の遺伝子のクローニングを進める。幸いにも、ヘリウムガスを入手することができたため、Cryptococcus neoformansの遺伝子発現ベクターを使ってクローニングし、Cryptococcus neoformansにゴム分解関連遺伝子を発現させ、遺伝子産物を精製し、精製した酵素をゴムに作用させ、ゴムの化学構造の変化を調べる予定である。ゴム関連遺伝子、27遺伝子についてクローニングを行っているため、これら遺伝子産物を、さまざまに組み合わせ、ゴムへの影響を調べていく。 菌作用後のゴム分解物の検出については、エチレンプロピレンジエンゴムを用いたゴム添加培地培養後の培養液からのゴム分解物の抽出を行い、TLCにより分解物を検出したところ、クリアなスポットを検出することができたため、この物質の同定を行う。
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Causes of Carryover |
当初、中型バイオシェーカー 一式を購入予定であったが、微生物実験に必須であるオートクレーブが故障したため、オートクレーブの購入を行った。その結果、差額が生じた。本年度の実験において、ゴム分解関連遺伝子が予想以上得られたため、来年度はこれら遺伝子産物のゴムへの影響を調べる予定である。遺伝子産物の精製には、ウェスタンブロッティング装置を含むタンパク質解析装置が必要であるが、この装置は他研究室でお借りしていた。来年度使用頻度の上昇が予想されるため、購入する予定である。
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Research Products
(10 results)