2020 Fiscal Year Research-status Report
菌類を利用した新規なゴム分解酵素の探索から有機化学的手法を用いた解析への構築
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19K12389
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
清水 由巳 関東学院大学, 理工学部, 教授 (50725124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香西 博明 関東学院大学, 理工学部, 教授 (00272089)
清水 公徳 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 教授 (40345004)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゴム分解 / 担子菌 / リグニン分解酵素 / リパーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
① ゴム分解関連遺伝子のクローニングについて ブナシメジを用い、炭素源に天然ゴムラテックスを用いたラテックス培地培養時に多く発現する遺伝子群の中から、細胞外分泌型のタンパク質をコードする、20遺伝子を選び出した。また、ラテックス培地培養で発現量が特に多くなったリグニン分解酵素も選び出した。これらの遺伝子にヒスチジンタグを付加し、担子菌酵母発現ベクターにつなげて、ブナシメジの遺伝子を担子菌酵母を用いて発現させ、タンパク質を合成させ、これら合成されたタンパク質が、ゴム分解に関与するか調査中である。 ② リパーゼ遺伝子のクローニングについて 新規の細胞外分泌性リパーゼ産生菌を用い、産生されたリパーゼを精製し、タンパク質のN末端側アミノ酸配列の一部を決定した。現在、リパーゼ産生菌の全ゲノム配列を決定し、ゲノム配列中からリパーゼのN末端側アミノ酸配列の一部を検索することにより、リパーゼをコードする遺伝子の全長を決定中である。 ③ SBRゴム分解について ゴム分解候補株であるPhanerochaete sp. R20株をSBRに作用させ、作用前と作用後のゴムの構造をFT-IR、NMRを用いて解析した。本菌を作用させることにより、カルボニル基や水酸基が新たに生成されたことが判明した。これは、SBRのブタジエン部の二重結合が開裂したことによると予想している。また、SBRの二重結合の開裂等による主鎖の切断により生成したと考えられる、末端CH3も確認している。他方、R20株を用いて、天然ゴムラテックス培地培養で多く発現する遺伝子群を解析したところ、リグニン分解酵素をコードする遺伝子を見出した。これらの遺伝子に、PCR法によりヒスチジンタグを付加させ、できたPCR産物を担子菌酵母発現ベクターにつなげて、担子菌酵母にこれら遺伝子を発現させ、合成されたタンパク質が、ゴム分解に関与するか調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染症緊急事態宣言により、外出・移動の自粛のため、半年間研究が完全にストップしてしまった。そのため、2020年度中に終わるはずであったゴム分解関連遺伝子のクローニングは10以上の遺伝子について、まだ終わっていない。リパーゼ遺伝子のクローニングについても、2020年度中にリパーゼの遺伝子の全長を決定する予定であったが、途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ブナシメジを用いたゴム分解関連遺伝子のクローニングについては、他種の白色腐朽菌でリグニン分解酵素がゴム分解に関与するという報告があることから、ラテックス培地培養で発現量が特に多くなったリグニン分解酵素をコードする遺伝子の解析を優先する。 リパーゼ遺伝子のクローニングについては、現在、リパーゼ産生菌の全ゲノム配列を決定し、ゲノム配列中からリパーゼのN末端側アミノ酸配列の一部を検索することにより、リパーゼをコードする遺伝子の全長を決定中である。また、リパーゼを精製する方法が確立されつつあるため、この方法を用いて精製したリパーゼを用い、ゴムへの影響を調査する。 SBRゴム分解については、 ゴム分解候補株であるPhanerochaete sp. R20株、ブナシメジを用いて、合成培地であるラテックス培地を用いた培養では、菌の生育が悪いため、培養期間3カ月と長いことから、培地にビタミン類を添加するなど培養条件の検討を行う。また、培養物からのゴム分解物の抽出は、固形培地を用いていたため困難であったが、液体培地を用いた培養方法を検討する。さらに、菌作用によるゴム分解物の検出が、これまでは菌により代謝されてしまい、再現性が取れない状態であった。そこで、液体培地を用いた培養条件の確立後、菌体を除去した培養上清をゴムに作用させ、ゴム分解物の検出を試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度上半期は、コロナ感染症拡大のため余儀なく自宅待機となった。そのため、ゴム分解への関与が期待される遺伝子のクローニングや、遺伝子機能解析等の実験が一時中断となった。しかしながら、昨年度秋からは、通常の実験を行えるよう研究体制を立て直し、実験を進めている。そのため、次年度使用額に表示されている当該助成金を使用し、これらゴム分解への関与が期待される遺伝子の機能解析に関する実験を引き続き行う予定である。 昨年度実験ができなかった期間に、2021年度に執筆予定であった論文に関して、当初予定していた結果報告量よりも少ないボリュームで、短報などの形で論文報告を行った。報告した論文については、研究実績に示したとおりである。 以上のことから、ゴム分解への関与が期待される遺伝子のクローニングや、遺伝子機能解析等の実験と、論文執筆の期間を入れ替えたという変更は行ったが、2021年末までには、当初予定したとおりの成果が得られることと期待している。
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Research Products
(2 results)