2019 Fiscal Year Research-status Report
レアメタル呼吸細菌を用いた廃水からの結晶構造別アンチモン回収技術の開発
Project/Area Number |
19K12394
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
山村 茂樹 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (90414391)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天知 誠吾 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (80323393)
小林 弥生 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (00391102)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 三酸化アンチモン / アンチモン呼吸細菌 / 廃水処理 / レアメタル資源回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
三酸化アンチモンには、結晶構造の異なる2種類の結晶鉱物(セナルモンタイトおよびバレンチナイト)が存在するが、それぞれ異なる用途で利用される。結晶構造別三酸化アンチモンの生成条件を解明するため、当研究グループで単離したアンチモン(Sb)呼吸細菌の一種であるGeobacter sp. SVR株を用いて、アンチモン酸[Sb(V)]還元試験を行った。pH 7.0の緩衝溶液中で実験を行ったところ、Sb(V)の還元と共に溶液中のSbの減少が起こり、白色沈殿の生成が確認された。回収した沈殿を走査型電子顕微鏡で観察した結果、蝶ネクタイ状の結晶が確認された。エネルギー分散型X線分析から、これらの粒子・結晶の主成分は、SbとOであることが確認された。また、X線回折による結晶構造解析を行ったところ、斜方晶系の三酸化Sb鉱物であるバレンチナイトとピークパターンが完全に一致した。一方、pH 8.0の緩衝溶液中で実験を行ったところ、同様に溶液中のSb減少並びに沈殿形成が生じたが、沈殿物の様相が大きく変化し、八面体構造の結晶が観察された。X線回折から、これらの結晶は立方晶系の三酸化Sb鉱物であるセナルモンタイトであることが確認された。以上の結果から、Sb(V)を還元する際のpHを変化させることによって、バレンチナイトとセナルモンタイトをそれぞれ単独で生成できることが明らかとなった。また、新たなSb呼吸細菌の単離を試み、Desulfitobacterium sp. E-1株とDesulfosporosinus sp. B-3株の2菌株を取得した。Sb(V)還元試験、生理・生化学試験、ならびに系統解析の結果から、これらの菌株は、SVR株とは系統的に大きく異なるものの、SVR株と同程度のSb(V)還元能力を有していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sb呼吸細菌が三酸化Sb鉱物を生成する際のキーファクターがpHであることを示し、結晶構造の異なる2種の三酸化アンチモン鉱物をそれぞれ単独で生成できる条件を特定した。また、新たなSb呼吸細菌を取得し、その基本的特性を明らかとした。2019年度の当初目標をほぼ達成しており、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られた結果をベースとして、各菌株の生理的特性やSb(V)還元・三酸化アンチモン生産能力をより詳細に調査し、バレンチナイトとセナルモンタイトそれぞれの回収に最適な菌株を選定する。ドラフトゲノム解析を行い、得られた塩基配列情報から、その特性を遺伝子レベルで把握する。また、Sb(V)還元・Sb回収プロセスの高効率化を検討する。
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Causes of Carryover |
所内依頼分析が一部次年度にずれ込んだため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、それらの分析等での使用を予定している。
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