2019 Fiscal Year Research-status Report
固体高分子水電解における不純物起因劣化メカニズムの解明および特性回復手法の確立
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19K12401
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
西岡 賢祐 宮崎大学, 工学部, 教授 (00377441)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素 / 固体高分子電解質膜 / PEM / 劣化 / 回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光発電等の再生可能エネルギー由来の電力を用いた水電解により水素を生成するCO2フリー水素の大規模製造は、水素社会を再生可能エネルギーシステムにつなげる不可欠な技術である。固体高分子電解質膜(PEM)を用いたPEM水電解は高効率で高純度な水素製造技術である。PEM水電解では装置保護のため純水を用いることが必須であるが、水を真にエネルギー源にするためには莫大な量の純水を得る必要があり、水処理コストが水素製造コストを押し上げる危険性が高い。どの不純物成分が、どの部分に、どのように、影響しPEM水電解装置を劣化させるのか、メカニズムを明らかにすることにより、各種の不純物成分をどの程度まで処理した純水が必要なのかが明確になり、水処理コストの大幅削減に寄与できる。 本研究では、PEM水電解装置の不純物(金属イオン、有機物汚染)による劣化メカニズムを明らかにし、水電解装置を破壊しない不純物レベルを検証した。 超純水に不純物としてNaHCO3、CaSO4・2H2O、MgSO4、およびKClを添加することにより、代表的な汚染金属であるNa、Ca、Mg、Kを含む人工河川水を生成した。PEM水電解装置を用いた水電解動作を行うことにより電解効率を初期値の50%まで劣化させた。その後、アノード、カソード、および電解質膜のそれぞれに付着した元素について高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)で分析した。その結果、アノードおよびカソードについては、劣化前後における付着量の差は確認されなかったが、電解質膜においてCaおよびMgの付着が確認された。また、その付着量と電解効率に相関関係が見られた。これは、CaおよびMgの価数がNaおよびKと比べ大きいことに起因すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、不純物に起因するPEMの劣化について調査し、劣化に影響している元素をつきとめることができた。また、不純物が付着する場所についても判明したため。
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Strategy for Future Research Activity |
不純物により劣化したPEM水電解装置について、不純物除去のための電気化学的手法を確立する。不純物汚染される部位が明らかになっているため、その部位において適切な不純物除去のための電気化学処理法を探索する。電気的回復手法として、PEM水電解装置に逆バイアスや純バイアスを印加することにより特性回復をめざす。最も効率的かつ非破壊で特性を回復させる印加条件を探索する。また、化学的処理による不純物の除去に取り組む。陽極および陰極は金属であるため、それらの金属にダメージを与えない薬品を選定する。PEMはスルホン酸基(-SO3-H+)を有するフッ素樹脂膜であるため膜にダメージを与えない薬品の選定に特に注意する。除去対象の不純物に応じて、酸、アルカリ、有機洗浄を中心に検討する。
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