2019 Fiscal Year Research-status Report
超音波援用した浸出法を用いた廃電子基板からの金属リサイクル新技術の開発
Project/Area Number |
19K12402
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
梁 瑞録 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (10315624)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | リサイクル / 浸出 / 超音波 / 廃電子基板 |
Outline of Annual Research Achievements |
基礎研究として、金属鉱物、焼却飛灰、単体の金属板および廃電子基板を供試料とし、塩酸、硝酸、硫酸などで通常浸出および超音波援用した浸出を実施した。通常浸出は常温や加熱状態で静置や攪拌による浸出である。超音波援用した浸出は、所定温度で周波数35 KHz、出力300 Wの条件で超音波を照射しながら浸出を行う方法である。金属板の浸出では、浸出および重量測定を行った後、再び同じ条件で浸出を数回繰り返す。廃電子基板の浸出においては、完全に同様な試料を確保することが難しいため、一つの試料に対して超音波援用した浸出と通常浸出を交代して6回程度の浸出を行い、それぞれの浸出法の浸出量および合計値で浸出の促進効果を評価した。 磁鉄鉱鉱物の塩酸浸出においては、超音波援用した方が浸出率は高くなり、超音波援用による浸出の促進効果が認められた。一方、硝酸での金属銅の浸出や、塩酸でのアルミニウムの浸出においては、超音波照射した場合の浸出率は通常浸出のそれより低くなり、超音波援用による浸出の促進効果が認められなかった。廃電子基板の浸出においては、試料の性質により異なる結果となった。基板内部に金属がなく、表面上に銅が露出している基板の浸出は、金属単体の浸出結果と類似している。一方、基板の内部と表面に銅や錫などの金属を含む基板を使用した浸出においては、超音波照射した場合の浸出率は通常浸出のそれより大幅に増加し、超音波援用による浸出促進効果が大きいことが明らかになった。また、金属の種類による浸出の促進効果は異なることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R1年度は、おおむね順調に進展している。単体の金属板および廃電子基板などの金属類試料と、磁鉄鉱および焼却飛灰などの金属化合物を供試料とし、塩酸、硝酸、硫酸などの多種の酸で通常浸出および超音波援用した浸出を実施した。通常浸出では各試料に対して、金属の浸出率は酸の種類、攪拌の有無、温度などの影響因子との関係を検討した。超音波援用した浸出では主に酸の種類と濃度、温度、浸出時間などによる影響を検討した。金属化合物、金属単体および金属が表面に露出のみの廃電子基板、そして基板の内部と表面に銅などの金属を含有する廃電子基板の3種類の試料に対して超音波援用の浸出の促進効果を評価した。金属単体および基板の内部に金属を含有する廃電子基板への超音波援用の浸出機構も検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
R1年度の成果をふまえ、鉄、亜鉛、金、銀、ニッケルなどの金属、黄銅鉱、閃亜鉛鉱などの金属鉱物、性質が同じの廃電子基板を供試料とし、通常浸出および超音波援用した浸出を行い、今まで得られた結論を検証し、論文として発表する予定である。超音波援用した浸出においては、廃電子基板内部の金属の浸出促進効果と基板の構造の関係を検討し、金属の種類による浸出促進効果の相違を明らかにする。また、超音波援用した浸出では、超音波周波数と出力を変えることができる超音波発信機を購入し、超音波援用した浸出の促進効果と超音波周波数、出力との関係を検討する。そして、超音波キャビテーションメーターを用いて、超音波強度と浸出の促進効果の関係を明らかにする。以上の結果より超音波援用した浸出における金属単体および廃電子基板への浸出メカニズムを検討する。
|
Causes of Carryover |
(理由)R1年度の超音波援用した浸出実験は研究室に保有している超音波洗浄機で行い、主な使用予定である超音波発信機の購入費が未使用のため。
(使用計画)R1年度の実験結果と来年度前半の実験結果より、必要な超音波発信機性能を決めてから、新しい超音波発信機を選定する。R1年度の次年度使用額は主に超音波発信機の購入および冷却水循環装置の購入に使用する予定である。
|