2021 Fiscal Year Research-status Report
超音波援用した浸出法を用いた廃電子基板からの金属リサイクル新技術の開発
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19K12402
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
梁 瑞録 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (10315624)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リサイクル / 浸出 / 超音波 / 廃電子基板 |
Outline of Annual Research Achievements |
①単体金属の浸出:純度99.9%の金属亜鉛粒体(2.8~3.35μm)及び金属銅粒体(φ2×2 mm)を実験試料とし、超音波援用した浸出および静置浸出を実施した。超音波援用した浸出は周波数20KHzの超音波ホモジナイザーを用いて行った。 亜鉛の浸出:硫酸濃度2.0 mol/L、浸出時間30分、浸出温度50℃で静置浸出の浸出率は27%程度であったが、出力20 Wの超音波援用した浸出の浸出率は61%程度と大幅に上昇した。また、浸出温度、浸出時間などの条件を変化しても超音波援用した浸出の浸出率は静置浸出の浸出率より高く、超音波援用による亜鉛の浸出は促進の効果があることが分かった。 金属銅の浸出:硝酸濃度2.5 mol/L、浸出時間30分、浸出温度60℃で静置浸出の浸出率は28%程度であったが、出力10 Wの超音波援用した浸出の浸出率は3%程度と大幅に低下した。超音波援用した浸出では浸出後の銅の状態は浸出前とほぼ同じく、金属光沢や表面状態はあまり変化がなかった。また、浸出温度、浸出時間などの条件を変化しても超音波援用した浸出の浸出率は静置浸出の浸出率より低く、殆ど10%以下となっている。超音波援用による銅の浸出は抑制されることが分かった。 ②金属銅と亜鉛の混合試料の浸出:硝酸濃度2.5 mol/Lでの混合試料の浸出においては、5分間超音波援用浸出の亜鉛浸出率は、静置浸出の32%から99%程度まで大幅に増加した。一方、超音波援用浸出の銅の浸出率は、静置浸出の2%から5%にやや高くなり、銅金属単体の浸出結果と異なることが分かった。しかし、亜鉛浸出率が同じ場合では超音波援用浸出の銅の浸出率は静置浸出の浸出率の半分程度以下となった。混合試料の亜鉛と銅の浸出率の差は超音波援用浸出の方は静置浸出の浸出率の差より大きくなり、亜鉛に対する選択浸出の効果があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、亜鉛、アルミニウム、銅、鉛などの金属、磁鉄鉱などの鉱物および廃電子基板などを供試料とし、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム水溶液などの浸出液で通常浸出および超音波援用した浸出を実施した。撹拌および静置浸出などの通常浸出では、金属の浸出率と酸の種類、攪拌の有無、温度などの関係を検討し、超音波援用した浸出では主に酸の種類、温度、浸出時間および超音波種類などの影響を検討した。亜鉛などの金属粒体を実験試料とした基礎研究では、超音波ホモジナイザーを用いた超音波援用した浸出と通常浸出を行い、浸出率および浸出速度と浸出温度、浸出時間、酸の種類・濃度、超音波の出力との関係を明らかにした。金属銅の硝酸浸出では超音波援用した浸出の浸出率は静置浸出の浸出率より低く、抑制効果が確認された。銅以外の金属粒体の浸出では、超音波援用した浸出の浸出率は静置浸出の浸出率より高く、浸出の促進効果があることがわかった。亜鉛と銅の混合試料の浸出では超音波援用浸出は亜鉛に対する選択浸出の効果があると考えられる。また、超音波援用した浸出での超音波照射の影響は、超音波の種類、金属と浸出液の種類などによって異なることがあったが、今後検証する実験を行う必要がある。本年度までにこれらの基礎的な検討が実施できており、研究はおおむね順調に進展したと評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの成果をふまえ、まず金属単体を用いて、ホーン型超音波(超音波ホモジナイザー)とバス型超音波(超音波洗浄機)による超音波援用した浸出での作用機構の違いを検討する。次に、浸出対象物の粒度や浸出液と浸出対象物の反応パターンの違いによる超音波援用した浸出の作用機構の相違を検討し、超音波照射による浸出の促進と抑制効果のメカニズムを明らかにする。そして、純金属の浸出結果を基づいて、超臨界水処理した廃電子基板試料への超音波援用した浸出の適応や、廃電子基板への超音波援用した浸出の直接適応における廃電子基板内部の金属の浸出促進効果と基板の構造などの関係を調べ、選択浸出の可能性を検討する。また、浸出液から貴金属の選択回収の可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)R3年度の金など貴金属の浸出実験は研究室に保有する物で行い、主な使用予定である貴金属の購入費が未使用のため。
(使用計画)R3年度の次年度使用額は主に金、白金など貴金属固体および吸着・分析用の貴金属標準溶液の購入に使用する予定である。
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