2020 Fiscal Year Research-status Report
炭素を含まない固体化合物を還元剤に使用する新製鉄法
Project/Area Number |
19K12409
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
石川 信博 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (00370312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 義見 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50231014)
三井 正 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (90343863)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡内その場観察法 / 窒化ホウ素 / 酸化鉄還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は透過電子顕微鏡(TEM)内その場観察法で鉄鉱石の主成分である酸化鉄が他の炭素を含まない酸化物によって還元されることを見いだしたため、鉄を生成する反応では二酸化炭素を発生しない。これを出発点として還元元素として炭素を使用しないことにより二酸化炭素を発生させない製鉄法に結びつけられると考え本研究を開始した。2019年度までは主にTEM内で鉄を生成させることを確認した物質を使いバルクでも再現実験を試みたが、TEM内で実施した温度よりかなり高温で保持しても、鉄の生成速度はTEM内と大差なく、長時間高温で保持しても顕微鏡で探すような微小な鉄の粒子しか確認できなかった。そこで候補物質の範囲を広げて適切な物質を探したところ、窒化ホウ素に高速で鉄を生成させる能力が存在することが判明したため、主にこれを対象として鉄生成過程の解析を行った。酸化鉄還元に関して窒化ホウ素の持つ能力は以下の通りである。鉄を生成させる温度はおよそ1150℃以上、また同じ温度域で通常は固体の酸化鉄を液化する機能もあり、工業的にも扱いやすい。また実験に供した酸化鉄か窒化ホウ素のどちらかが消費されきるまで反応は継続し、それも数時間で終了するため、鉄の大量生産に利用することも可能と推測可能に至った。また熱分析を行ったところ発生する気体の大半が窒素で一部酸素という結果が得られた。ホウ素単体が酸化鉄を還元することは既知であるが、だとすれば、窒化ホウ素が容易に分解した原因と、検出されなかった酸素は酸化ホウ素を形成したと予測できるが、他の分析法と比較しても酸化ホウ素は非常に少量であるので残りのホウ素の行き先を探るのは今後の課題として残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々が還元剤として扱っている物質は世界で誰も取り上げていないため、参考文献が無く特にバルクでどの程度鉄を得られるか予測がつかなかった。また実際19年度まで取り扱っていた物質では非常に鉄の析出速度が遅く、実用面を想定するとまだ道のりは長いと思われたが、窒化ホウ素の還元能力は非常に高く、一気に実用に近いレベルの還元速度が期待できることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見つけた鉄を容易に生成させる窒化ホウ素はセラミックスの中で非酸化物系であり、同じ窒化物である窒化ケイ素を使っても鉄と思われる物質の析出が確認できた。いずれも高価なので将来安価で調達できるようになるかもしれないが、当面は添加物としての利用を検討するのが現実的と思われる。そこでこれを添加することで鉄の析出が速まる物質の組み合わせを開発する。一方で気候変動サミットも開かれ二酸化炭素削減の要求はますます厳しくなっているので研究を加速したい。
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Causes of Carryover |
次年度は最終年度であり、研究のまとめをすれば良いはずであったが、2020年度に注目した窒化ホウ素以外にもかなり高速で鉄を生成させる物質が見つかり、これに次年度取り組む予定となったことと、こういう物質が新たに見つかったことでさらに複雑な物質系を用意して実験を継続する必要が生じたため、次年度も一定額を確保した。
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