2020 Fiscal Year Research-status Report
森林‐草原の柔軟な景観管理手法の構築:木本植物と草本植物の生態系機能をいかす
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19K12426
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小山 明日香 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90812462)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 生態系管理 / 半自然草原 / 土地利用変化 / 埋土種子 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は過去に採草地として利用され、現在多様な土地利用に変化した森林-草原モザイク景観を対象に、草原性植物の種子資源ポテンシャルを評価した。長期的な生物多様性保全には、更新の元となる種子資源の確保が不可欠であるが、絶滅危惧植物(特に草本植物)の多くは種子資源が乏しい。一方で、近年人工林皆伐後に絶滅危惧種を含む草原性植物が出現する例が複数報告されている。そこで、1年目に植生調査をおこなった長野県の多様な土地利用下(管理半自然草原、放棄半自然草原、常緑性人工林、落葉性人工林)において土壌を採取し、温室で播出法による埋土種子調査をおこなった。 調査の結果、約70種826個体の種子が確認され、うち草原性植物は約30種であった。管理半自然草原と比較して、草原性植物の種子種数および種子数は放棄半自然草原で低かった一方、常緑性および落葉性人工林では有意な差はみとめられなかった。このことから、人工林下に管理半自然草原と同程度の草原性植物の種子資源が存在する可能性が示された。 一年目の植生調査の結果から、地上部植生における草原性植物の種数は、管理半自然草原と比較して常緑性人工林では著しく低いものの、放棄半自然草原および落葉性人工林では低いものの存在することが分かっている。現在、草原の生物多様性保全・再生は放棄草原の管理再開によって試みられることが多いが、これら一連の成果を踏まえると、草原利用履歴をもつ森林の管理によって、半自然草原の生物多様性保全や再生をすすめることができる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、一部の地域での野外調査や温室実験を実施し、データ解析を進め、当初の計画通り研究を遂行することができた。データ解析にやや遅れが生じているが、これまでの成果を国内学会で公表するなど、概ね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目および2年目に収集したデータをもとに、現在および過去の土地利用が植物種多様性および種子資源ポテンシャルに与える影響を解析し、投稿論文として取りまとめる。また、1,2年目には草本植物を主な対象として研究を進めたが、3年目には草原生態系に生育する木本植物の生物多様性および生態系機能評価のためのデータを収集し、解析をおこなう。これらをもとに、森林‐草原モザイク景観の多面的機能の向上に資する生態系管理手法を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、複数地域で行う予定であった野外調査を一部延期としたことや、多くの国内・国際学会や研究集会がオンライン開催となったことで、旅費および人件費・謝金の支出が大幅に抑えられ、次年度に繰り越すこととなった。3年目は感染拡大状況を踏まえながら延期とした地域での野外調査を行うとともに、オンラインを含む国内・国際学会での研究成果の公表、論文投稿(英文校閲、論文のオープンアクセス化等)を中心に計画的に予算を執行する。
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