2019 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー大転換と持続可能な地域形成における合成の誤謬解消の環境ガバナンス研究
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19K12439
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
中島 清隆 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (20522949)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 持続可能な地域社会(論・構成要素・形成要件) / エネルギーシフト・ヴェンデ(大転換)(論・運動) / 合成の誤謬 / 内発的発展論 / 里山資本主義(論) / 田園回帰1%戦略(論) / 市民共同太陽光発電所 / 中小企業(団体) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、環境政策に関する社会科学分野の学際・総合研究として、エネルギー大転換(エネルギーシフト・ヴェンデ)による持続可能な地域社会の形成メカニズムを解明することにある。そのために、本研究の目的として、エネルギー大転換による持続可能な地域社会の形成に向けた「合成の誤謬」(環境・エネルギー政策・対策におけるミクロとマクロの不整合)現象解消策としての環境・エネルギーガバナンスのあり方を考察することと設定した。 2019年度の研究計画は、【理論研究】社会学・財政学・地域経済学領域の内発的発展論と里山資本主義・エネルギー大転換・田園回帰1%戦略の議論、並びに、地域を対象とする持続可能性、「持続可能な開発・発展」の議論の関係性を検討すること、【事例研究】本研究の対象事例である岩手県野田村「だらすこ市民共同太陽光発電所」の運営と岩手県中小企業家同友会によるエネルギーシフト・ヴェンデ運動の進捗状況を把握し、両事例と関係者(間)の変容を観察すること、であった。 研究実績として、【理論研究】では、内発的発展論と里山資本主義論・田園回帰1%戦略論・エネルギーシフト・ヴェンデ論を整理し、共通・類似点(関係性)を検討した上で、「持続可能な地域社会の構成要素・形成要件」を設定、更新できた。この研究成果は3本の論文に反映させている。【事例研究】では、両事例に関するイベントなどに参加するフィールドワークを行ったことで、両事例の進捗状況を確認、把握できた。また、岩手県野田村「だらすこ市民共同太陽光発電所」と関係がある静岡県・岩手県一関市の市民共同太陽光発電所関係者にインタビュー調査を行ったことで、岩手県野田村「だらすこ市民共同太陽光発電所」の進捗状況を把握できたとともに、同発電所の設立から現在に至る経緯を他事例の観点から再確認できた。「だらすこ市民共同太陽光発電所」を取りあげた査読付論文も掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【理論研究】社会学・財政学・地域経済学領域の内発的発展論と里山資本主義論・田園回帰1%戦略論・エネルギー大転換(エネルギーシフト・ヴェンデ)論を研究計画通りに整理できた。これらの共通・類似点(関係性)を検討できたことで、本研究の対象事例に適用する3つの分析視角(連携・協働、仕組・制度、成果・効果)につながる「持続可能な地域社会の構成要素・形成要件」を設定、更新することができた。内発的発展論に関する論文は掲載済。里山資本主義論・田園回帰1%戦略論と内発的発展論に関する論文は投稿済。エネルギーシフト・ヴェンデ(大転換)論に関する論文は2020年度中に投稿予定である。 【事例研究】本研究における対象事例の1つである岩手県野田村「だらすこ市民共同発電所」を取りあげ、(地域)連携の観点から、市民共同再生可能エネルギー発電所の成立要件を検討した査読付論文が掲載された。対象事例のフィールドワークとして、岩手県野田村「だらすこ市民共同太陽光発電所」を開催場所とする「野田村自然エネルギー寺子屋」に研究計画通り参加でき(2019年5・9月)、岩手県中小企業家同友会によるエネルギーシフト欧州視察に研究計画通り同行できた(2019年11・12月:ドイツ・スイス訪問)。また、岩手県野田村「だらすこ市民共同太陽光発電所」と関係がある静岡県PV-Net(認定特定非営利活動法人太陽光発電所ネットワーク)静岡地域交流会による市民共同太陽光発電所と岩手県一関市にある「一関市民なのはなソーラー発電所」の関係者を対象として、研究計画通りにインタビュー調査を行うことができた(2019年11・12月)。
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Strategy for Future Research Activity |
【理論研究】として、本研究の対象事例に適用する3つの分析視角(連携・協働、仕組・制度、成果・効果)を考察、特定するために、環境政策理論である環境(エネルギー)ガバナンス論とパートナーシップ論、環境政策の原則である補完性原則と協働原則の議論を整理し、2つの理論と両原則の関係性を検討する。これらの研究成果に基づく論文を執筆する。【理論研究】の結果・成果を踏まえて設定した「持続可能な地域社会の構成要素・形成要件」から、3つの分析視角を抽出する。 岩手県野田村「だらすこ市民共同太陽光発電所」と岩手県中小企業家同友会のエネルギーシフト・ヴェンデ運動を対象とする【事例研究】として、フィールドワークで両事例と関係者(間)の変容を引き続き観察、把握する。両事例関係者(岩手県内の認定特定非営利活動法人1名、岩手県中小企業家同友会事務局長1名、岩手県中小企業家同友会会員企業関係者2名)へのインタビュー調査を行う。両事例に理論研究で抽出した3つの分析視角を適用し、エネルギー大転換による持続可能な地域社会の形成要件・構成要素を再検討する。 理論・事例研究の結果から、環境・エネルギー政策・対策における「合成の誤謬」現象の解消要件と環境・エネルギーガバナンスのあり方を検討する。あわせて、形成要件・構成要素を交え、エネルギー大転換による持続可能な地域社会形成モデルを考察する【総合研究】。 研究計画の変更及び研究を遂行する上での課題として、新型コロナウィルスの状況次第で、2020年度中に、フィールドワークとインタビュー調査を研究計画通りに実施できないことが想定される。その対応策として、インタビュー調査は2021年度への延期を検討する。フィールドワークが2020年度中に実施できない場合でも、両事例の進捗状況を引き続き確認する。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】 当初、計画していたインタビュー調査が、本研究で取りあげる対象事例の進捗状況を踏まえ、必要ないと判断したことで、その分の旅費・謝金が生じなかったため。 【次年度使用額の使用計画】 本研究で取りあげる2つの対象事例におけるフィールドワークの旅費に充てる予定である。
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