2019 Fiscal Year Research-status Report
Proposal of gaming workshop for co-creation of energy policy
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19K12440
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 研悟 筑波大学, システム情報系, 助教 (50634169)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲーミング / 電力システム / エネルギー政策 / 科学技術コミュニケーション / エネルギーシステム工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ゲーミング手法の学術的基盤を整備,本研究課題の前身となるゲーミングの学習効果の評価,および現代日本の政策課題を表現するゲームの開発を行った. 【1.ゲーミング手法の学術的基盤の整備】本稿は,動学的最適化モデル,ゲーム理論,社会心理学実験,ゲーミングにまたがる分野横断的な文献レビューを行い,ゲーミングが既往の研究手法に対してどのような利点を持つのかを明らかにした.レビューの結果,ゲーミングは,社会システムを互いに異なる主観的現実をもつ主体の集合として表現し,そうした多元的現実の下で望ましくない経路が選ばれる理由や,より望ましい経路をめざす方策を検討できることがわかった. 【2.エネルギー教育用ゲーミングの学習効果の解明】大学教育用に開発されたゲーミングの学習効果を,内容分析を用いて体系的に評価した.受講者の9割が,2つの学習目標すなわち「技術選択を通じて社会からの要請に応えられるシステムを構築する視点」と「価値の対立を乗り越えて合意形成する能力・態度」の少なくとも片方を達成しており,また,これらの学習目標を超えた多様な学びが観測された.これらの結果は,ゲーミングが分野融合的なエネルギー政策課題の共有に役立つことを示すものである. 【3.現代日本の政策課題を表現するゲームの開発】新しいゲームは,原子力の是非や都市圏と地方の非対称性等の現代日本の政策課題を表現する.参加者は中央政府,地方自治体,エネルギー事業者の役割を分担し,電源建設,販売価格設定,政策的支援等の行動を通じて各々の勝利条件を目指す.今年度は,仕様策定,概念図の作成,モデルの開発,および実装を行い,ゲームをプレイ可能な状態まで仕上げた.さらに,日本シミュレーション&ゲーミング学会において,専門家・非専門家双方を対象とするワークショップ形式の学術発表を行い,得られた意見・コメントに基づいてゲームを改良した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,ゲーミング・ワークショップの学術的基盤を整備し,査読付き学術論文2本を公開した.さらに,ゲームの開発と改良を行い,ワークショップ形式の学術発表を行った.ゲームはおおむね完成しており,ワークショップにおける学習効果の評価方法についても検討を進めている.ただし,新型コロナウイルス感染症の影響により,年度末に行う予定であった模擬ワークショップ実験を延期した.この実験は,デザインしたワークショップの内容と評価方法の検証を目的とするものであり,筑波大学の学生を協力者として,実際のワークショップを想定したゲームプレイと振り返りを行うことを計画していた.この実験については,2020年度以降,感染症が収束し次第行う計画である。以上のように,当初計画を100%達成できたわけではないものの,おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は当初,ワークショップを完成させて多様な状況で実施し,課題共有ツールとしての機能と社会シミュレーションとしての機能を検証する計画であった.しかし,このワークショップでは,数名~20名程度の参加者が一堂に会してゲームを行うことを想定していたため,新型コロナウイルス感染症が蔓延する昨今の状況を鑑みると,研究を当初計画通りに進めることは困難と考えられる.そこで本年度は,以下の通り計画を修正した上で研究を進める予定である. 【1.遠隔型ワークショップの開発】 感染症の影響であらゆる社会活動が遠隔で行われるようになった結果,開催が容易,フラットなやり取りが可能といった,遠隔でのコミュニケーションの利点が広く認識されるようになった.そのため,学術・ビジネス目的のセミナーやワークショップを含め,遠隔でのコミュニケーションは感染症終息後も活発に行われると予想される.そこで本研究は,当初対面で行う予定であったワークショップを遠隔用に再デザインし,研究を継続する.そのため,当初計画していた内容に加えて,遠隔化を前提としたゲームの改良と,遠隔での実施環境の構築を追加的に行う. 【2.対面型ワークショップとの比較分析】 感染症の終息状況次第であるが,対面型ワークショップの開発も可能な範囲で進める.対面での実験を感染症終息後に実施し,ゲームの展開,ワークショップの学習効果,参加者の所感を遠隔の場合と比較する.これにより,当初計画していた研究成果に加えて,対面型と遠隔型のゲーミング・ワークショップの特長の違いを明らかにすることを目指す.
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Causes of Carryover |
2019年度に余剰金が生じた主な理由は,新型コロナウイルス感染症の影響により,年度末に行う予定であった模擬ワークショップ実験を延期したことである.実験参加者への謝金を計上しており,所属組織における研究倫理審査も通していたが,昨今の社会的状況をかんがみ,2020年度以降に繰り越すこととした.なお,2020年度はワークショップをオンライン化して研究を継続するため,現時点では,費目の大幅な変更は想定しておらず,前年度の余剰金は,そのまま実験参加者への謝金として用いる予定である.ただし,オンライン化に伴う消耗品の追加購入や人件費の増加,新たな研究項目の追加による論文投稿費用の増加,移動制限にともなう旅費の減少等が想定されるため,研究プロジェクトの主旨に照らし合わせて適正な範囲で,適宜調整を行う予定である.
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