2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a Communication Method for Increasing Willingness to Pay to Water Tariff
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19K12443
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 禎彦 京都大学, 工学研究科, 教授 (10184657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 修久 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (00399619)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 上水道 / 水道料金 / 人口減少 / コミュニケーション / 支払意思額 / 共分散構造分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題1 水道料金に対する支払意思に関する因果構造モデル構築 需要者の支払意思に関連した心理量を測定し、支払意思と各種意識との間のモデルを構築した。これによって、支払意思額増大のためにはどのボタンを押す(因子に働きかける)のが効果的かといった有効因子の特定や、因子間の重要度の比較が可能となる。調査対象は、北海道地方A市、中部地方B市、中国地方C市、九州地方D市の4市とした。インターネットを利用したアンケートを行い820人から回答を得た。分析の結果、「値上げ容認度」に最も影響を及ぼすのは「現在の料金レベルに対する評価」であることが分かった。ついで、「情報評価」、「水道事業に対する信頼感」、「水道水質に対する満足感」因子があげられた。一方、「水道事業の現状や将来経営に関する認識」は小さい効果しかなく、当初の予想とは異なっていた。以上に基づいて、観測変数との関連について考察を行うことにより、値上げ容認度を増大させるための重要なコミュニケーションポイントを指摘することに成功した。同時に、コミュニケーションは説得的に行うのではなく、双方向性を確保することが重要であると指摘した。 課題2 水道局が管轄する小規模水道の経営実態に関する調査 北海道富良野市、静岡県静岡市、京都府福知山市を対象として、水道局および住民へのヒアリング調査を実施した。調査内容は、施設設置の経緯、管理組織の構成、規約、管理実態、水道料金設定法、行政による教育の有無、利用者としての満足度やニーズ、将来見通し等である。住民へのインタビューで聴取した内容を発話データとしてとらえ、言語統計分析に供することによって、住民の意識構造を可視化することができた。この結果は、地元住民とコミュニケーションする際の重要ポイントを提示しているといえる。また、彼らが重要視している点に対して重点的に支援を行うことも有効と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1においては、調査票を適切に設計してアンケートを実施することで、分析に必要なデータを得ることができた。これを共分散構造分析に供することによって、水道料金について、特に値上げ容認度に関する因果構造モデルを構築することに成功した。また、結果を総合的に考察することによって、値上げ容認度を増大させるための重要なコミュニケーションポイントを指摘することができた。 課題2では、北海道富良野市、静岡県静岡市、京都府福知山市という地域特性が異なる3か所を訪問して調査を行うことができた。特徴は、事業体職員の方には席を外していただいた上で、住民に対して直接インタビューを行ったことである。この生の声を言語統計分析に供することによって、住民の意識構造を可視化することができた。今後の地元管理水道の管理運営方法に関連した重要な情報を提供していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1 水道料金に対する支払意思に関する許容範囲:これまでに、「値上げ容認度」に最も影響を及ぼすのは「現在の料金レベルに対する評価」であることが分かった。この結果を受けて、「料金評価」に対していかなる因子が影響を及ぼすかを探る。料金評価に影響すると予想される因子を広く取り上げ、これを情報提供し料金評価が実際に変化するかを検証する。アンケート対象群を分割し、情報提供する条件、情報提供しない条件を設定し、その差を測定する。両者を比較し、差が生じていれば、当該情報を提供した効果とみなす。また、水道料金に対して需要者が受け入れ可能な上昇幅を調べる。料金値上げの必要性に関する情報を呈示した上で、許容できるか否かを尋ねる。また賛成的な回答、否定的な回答をした理由も尋ねる。さらに許容できる値上げ幅を尋ねることとする。データを分析し、料金値上げに関する意識構造を把握するとともに、許容可能な需要者負担範囲を提示する。 課題2 地元組織が管理する小規模水道の経営実態に関する調査:水道局の管轄外に位置付けられ、地元組織で管理されている施設(静岡県静岡市内、京都府福知山市内)を対象とする。管理組織および水道利用者に対するヒアリング調査を実施する。また、静岡市、福知山市の所轄部課において実情をヒアリングする。課題1の分析結果、および実態調査結果を総合し、需要者負担の許容範囲と提供可能なサービス水準との関係を考察する。 課題3 コミュニケーション手法・技術の作成:料金改定の際の水道事業体による情報開示・提供の時期は、本来、料金改訂へ向けた構想段階から需要者に参画してもらう形で開始するのが望ましい。本研究の成果を総合して、日常的なコミュニケーション、および料金改定に直結したコミュニケーションを進める上での手法あるいは技術としてとりまとめる。
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