2019 Fiscal Year Research-status Report
防災・減災を考慮した気候変動適応策の時間的・空間的効果とその帰着構造に関する研究
| Project/Area Number |
19K12448
|
|---|
| Research Institution | University of Hyogo |
|---|
Principal Investigator |
中嶌 一憲 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70507699)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 気候変動 / 適応策 / 砂浜侵食 / 空間的応用一般均衡モデル / 旅行費用法 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、気候変動適応策の長期的効果およびその帰着構造を明らかにするために、環境価値評価モジュールを実装した動学的空間的応用一般均衡モデル（CGE: Computable General Equilibrium）の開発により，気候変動による沿岸生態系の変化，および防災・減災の機能を活かした気候変動適応策が及ぼす経済的影響を地域別・産業部門別・経済主体別に評価することである．本年度においては、旅行費用法モジュールの精緻化および応用一般均衡モデルの構築を目的とする。本年度の研究成果は以下の通りである。
第一に、2005年を基準とした地域間産業連関表を用いて、47都道府県20産業部門を持つ空間的応用一般均衡モデルを構築した。また、動学構造に関して、今期の貯蓄（貯蓄率一定）が今期の投資として用いられ，次期の資本ストックは今期の投資と資本減耗によって決まるような逐次決定型の準動学モデルに拡張した。
第二に、CGEモデルにおいて砂浜のレクリエーション価値を考慮できるようにするために、旅行費用法（TCM: Travel Cost Method）モジュールの精緻化を行った。ここでは、CGEモデルにおけるTCMモジュールの実装は坂本・中嶌(2012)および中嶌ら(2018)においてすでに成されているものの、使用データが古いため、利用可能な新たなデータを用いてTCMモジュールの精緻化を行った。
第三に、将来の気候変動に関するシナリオ構築に向けて、防災・減災の機能を活かした気候変動適応策としてグリーンインフラを検討し、その活用事例を収集した。また、気候変動に伴う砂浜侵食シナリオとして、Udo and Takeda (2017)による砂浜侵食率を収集した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究におけるこれまでの達成度は「②おおむね順調に進展している」と評価することができる。今年度の研究目的は大きく3つに分類することができるが、3つのほぼすべての段階において、研究目標は達成することができたと考えられる。第1段階においては、まず、静学の空間的応用一般均衡モデルを構築した後、逐次均衡型の準動学モデルに拡張した。第2段階においては、利用可能な新たなデータを用いて、CGEモデルにおけるTCMモジュールの精緻化および更新を行った。第3段階においては、将来の気候変動シナリオおよび適応策シナリオの構築に向けて、将来の砂浜侵食率に関するデータおよびグリーンインフラの活用事例を収集した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
| Strategy for Future Research Activity |
本研究は次年度において、砂浜の非利用価値の実証分析、仮想評価法（CVM: Contingent Valuation Method）モジュールのCGEモデルへの実装化を予定している。特に、アンケート調査に基づく砂浜の非利用価値の計測結果を用いて、CGEモデルにおけるCVMモジュールを実装するため、次年度の早い段階でアンケート調査を実施する必要があると考えられる。また、TCMモジュールを実装したCGEモデルによる砂浜侵食の経済的影響に関して、その結果および知見を取りまとめ、海外学術雑誌への投稿を行っていく予定である。
|
| Causes of Carryover |
設備備品費の購入を次年度に見送ったため、次年度に購入する予定である。
|
