2022 Fiscal Year Research-status Report
里山的入会のガバナンス再構築のための立法提案に向けた日英実態調査研究
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19K12452
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
鈴木 龍也 龍谷大学, 法学部, 教授 (30196844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 祥充 龍谷大学, 法学部, 教授 (30210652)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コモンズ / 入会 / ガバナンス / 里山 / 森林管理 / 部落有財産 / コモンズ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の柱の一つ、日本における里山的入会管理の現状に関する研究として、東近江市の「百年の森づくりビジョン」下で進められている地域ワークショップに参加するとともに、そこで得た知見をもとに、当研究プロジェクトと研究協力者である牛尾洋也が主催する研究プロジェクトが共催で継続的に開催する研究会にて鈴木龍也が「東近江市100年の森づくりビジョンにおける地域ワークショップの意義」を報告した。これは主に、住民が主体となった地域的な森林管理の可能性と課題について検討するものである。加えて、同研究会において、吉岡祥充が財産区制度を扱う報告を、そして鈴木が認可地縁団体による地域資源管理についての報告を行った。 本研究のもう一つの柱である2006年コモンズ法以降のイギリスのコモンズ管理の実態に関する研究においては、コロナ禍のために延期してきた調査の1回目を本年度末にやっと実施することができた。今回は主にレイクディスクリクト国立公園を含むカンブリア地方のコモンズについての調査を行った。当地における入会管理組織の歴史的展開に関する調査に加えて、具体的に環境スチュワードシップや農業支援のフレームワークへの参加に関するコモナーの合意形成に焦点を当て、コモンズ・カウンシルの形成が地主の反対により進まない中におけるコモンズ内での合意形成の困難さと、ボランティアや国立公園職員らによる合意形成への支援の仕組みや現実的機能についての調査を行った。なお、本年度においては本研究への支援者であるランカスター大学のBenjamin Mayfield博士を日本に招いて研究会を開催する予定であったが、コロナ禍の影響などにより実現が難しくなったため、今回訪英した際にランカスター大学を訪問し、意見交換する機会をもった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究はイギリスのコモンズにおける2006年コモンズ法に象徴される近年のコモンズ・ガバナンスに関する新しい取り組みの効果を検証し、管理放棄や管理不全が問題となっている日本の里山的入会のガバナンスの現状と照らし合わせることにより、日本の里山的入会におけるガバナンスの改革に向けた立法的対応の方向性を探ることを目的としている。そのため、イギリスのコモンズおよび日本の里山的入会のガバナンスの実態調査を行うことが研究遂行の2つの柱になっている。後者については2019年度から2022年度の全ての時期において、前者については2020年度と2021年度に1回ずつ計2回の実態調査を行うことを予定していた。 しかしながら、いずれにおいても2020年度以降のコロナ禍の継続により、その実施が著しく制限されることになった。国内においても2020年度以降は、調査対象者への配慮等から、研究代表者と研究分担者が本拠とする地域内であり、かつ行政が進める地域ワークショップに参加するという形での調査が可能となっている東近江市での地域森林管理のための取り組みへの参与調査をメインに進めざるを得なかった。また、イギリス調査については当初の研究計画の最終年度である2022年度になってやっと1回目の調査を実施することができたに過ぎない。全体の研究のまとめについても、その座標軸となるはずのイギリスの状況についての調査を最近になって初めて実施した状況であるので、本格的にはこれから取り組むという段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を2023年度まで1年延長し、イギリス調査をもう一度実施するとともに、イギリス調査が実施できないために遅れていた本研究のまとめの作業を並行的に進める。 まずイギリス調査においては、2006年コモンズ法が用意したコモンズ・カウンシルの導入を可能とする条件や導入の困難さの原因についての検討、さらにはコモンズ・カウンシルを導入したコモンズにおける意思形成の在り方と、導入しなかったコモンズにおける意思形成の在り方についての比較検討などを行う。 それをもとに、今日におけるコモンズ的な組織が、既存の権利関係を尊重し、かつコモンズとしての強みを保持しつつも、社会的な変化に応じて自らにとっての利害、さらには地域社会や国民的な要請を自律的に判断して利用用法の変更などにかかわる意思決定を柔軟にかつ機敏に行っていくことができるようになるためにはどのような組織形態・組織原理の変更が必要とされているのか、検討する。 加えて、日本の里山的入会の権利関係や入会地利用の実態、さらにはその歴史的変化についての検討を基礎に、イギリスにおけるコモンズ改革の正負にわたる成果を参照しつつ、日本における制度的な対応のあるべき方向やその実現可能性等について検討し、まとめる。
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Causes of Carryover |
当初はイギリスにおける実態調査を2020年度と2021年度の2回予定していたが、コロナ禍のために実施を延期してきていた。2022年度は年度末にイギリスの実態調査を実施することができたが、研究期間を1年延長し2023年度にもう一度実施する予定であり、そのための費用を残している。また2023年度は研究のとりまとめのために日本国内における補充調査やまとめのための講師を招いての研究会等を実施する予定であり、そのための費用をも残している。次年度使用額については予定されている以上のような使用のための費用として使用が予定されているものである。なお、次年度使用額となっている金額のうちの一部は2022年度に実施したイギリス調査に付随するものであり、使用額や内容についてすでに確定しているものをも含んでいる。
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