2022 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける森林の多面的利用の制度的基盤の解明
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19K12453
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
平野 悠一郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00516338)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 森林政策 / 多面的利用 / アメリカ / 保全地役権 / トレイル地役権 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスへの対応のため、アメリカでの実地調査がほぼ半年間制約され、予定通りとはならなかった。しかし、下半期に入って調査での渡航制限が緩んだため、現地調査を一回実施できた。 その結果、アメリカの保全地役権(Conservation Easement)の設定に伴う森林の多面的利用の担保に関して、東北部での実態解明に大きな前進が見られた。まず、保全地役権の設定は、その主要な保有主体であるランドトラスト(非営利土地保全団体)・行政機関と土地所有者の双方の働きかけに基づいて行われる。保有主体側は、森林の保全やレクリエーション利活用を目的とした寄付・ファンド獲得や助成政策がその設定の動機となる。一方で、土地所有者は、税制優遇措置や林地の維持が動機となる。また、林地上のトレイルにおけるレクリエーション利活用を担保する制度として、トレイル地役権(Trail Easement)が、保全地役権とは別個に存在することも明らかとなった。場合によっては、保全地役権が設定された土地内のトレイル底地に対して、トレイル地役権が上書きされる形で設定され、その保有主体がトレイルの維持管理とレクリエーション利用保障を恒久的に請け負うケースも見られる。これらの各種の法的権利の柔軟な運用を通じて、アメリカ東北部においては、林業、保全、レクリエーションといった多面的な林地利用が担保されている実態が浮き彫りになってきた。また、こうした法的権利の運用を含めて、土地所有者とランドトラスト・行政機関等を結びつける役割を果たしているのは、各種の公的・民間フォレスターである実態も改めて確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当年度の上半期にかけて、新型コロナウイルスの世界的な蔓延が続いていたため、予定していたアメリカでの実地調査が下半期のみ実施可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、アメリカ各地を訪問し、森林の多面的利用を促す制度の運用実態を探ることに大きな力点が置かれている。今後は、新型コロナウイルスによる渡航への影響が緩和され、滞りなく実地調査を行うことができると予想される。このため、研究期間の延長を再申請した上で、当初の成果を達成していく方針である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、予定していた実地調査(旅費)が実施できず、残額が大幅に生じた。研究期間を再延長の上、次年度において使用予定である。
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