2020 Fiscal Year Research-status Report
省エネ行動の促進に向けた異なる情報処理ルートの活用
Project/Area Number |
19K12457
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
本藤 祐樹 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (90371210)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 一益 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (60397164)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ナラティブ / ナッジ / 心理的近接性 / 意思決定 / 政策受容性 / 地球温暖化 / 再生可能エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
人々の省エネルギー行動を促したり、再生可能エネルギー導入など政策への人々の関与を高めたりするためには、それらの意思決定に資する情報の提供が重要であるとされてきた。しかし、情報提供は必ずしも人々の意思決定や行動の変化に結び付いてはいないようである。本研究課題では、人々が情報を処理するルート、言い換えれば認知し思考するルートの違いに着目して、効果的な情報提供のあり方について明らかにすることを目的としている。 2020年度においては、第一に、昨年度から引き続き、心理学、社会学、政治学、経営学、環境学などの分野において過去に実施されてきた広義のナラティブ型情報に関連する研究(ナラティブ、ナッジ、エピソディック情報、鮮明型情報、情報の心理的距離など)を幅広くレビューを行い、ナラティブ型情報の提供が、人々の意識や行動に与える影響に着眼して、その特徴や機能について整理した。 第二に、上述の文献レビュー結果に基づき、地球温暖化防止を事例として、具体的にナラティブ型情報の作成を試みた。横浜国立大学と富山大学の学生を対象に、論理型情報とナラティブ型情報を提供する2群の比較実験を繰り返し、質問紙調査結果を分析することで、ナラティブ型情報の作成・提供方法を開発した。 第三に、上述の方法に従って作成されたナラティブ型情報の効果を明らかにするために、約2000人(18歳以上)の参加者を2群に分け、論理型情報とナラティブ型情報を提供し、その影響について比較実験を実施した。比較実験を通して効果を分析するために、参加者のデモグラフィック属性やパーソナリティ、地球温暖化に対する認知や感情、地球温暖化防止に関する行動関与や政策受容性などを測定する質問紙を設計し、2群の参加者に情報提供後に回答を求めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理学、社会学、政治学、経営学、環境学などの分野において過去に実施されてきた広義のナラティブ型情報に関連する研究を幅広くレビューを行い、ナラティブ型情報の提供が、人々の意識や行動に与える影響に着眼し、その特徴や機能を明らかにした。エネルギー環境分野におけるナラティブ型情報提供の効果については過去にほとんど研究されておらず、本研究では、地球温暖化を事例として実際にナラティブ型情報を作成することを通して、ナラティブ型情報の作成・提供方法を示した。さらに、その方法によって作成・提供されたナラティブ型情報の効果を明らかにするために、効果分析に必要なデータの収集を目的として質問紙を設計・作成するとともに、Web会社を通じて得た十分なサンプルサイズのもとで論理型とナラティブ型情報の比較実験を実施した。 以上、当初の計画通りに研究は進展している。新型コロナウイルス感染症のために、予定していた、対面での情報提供実験や参加者へのインタビュー調査などは実施できなかったが、オンラインに切り替えることで、大きな問題なく予定通り研究を進めることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施した情報提供実験によって得られた質問紙調査の結果(収集データ)を統計的に分析することで、ナラティブ型と論理型の情報提供が、温暖化防止に向けた省エネなどの行動促進や政策受容性に与える影響の違いや特徴を明らかにする予定である。なお、分析結果の検討においては、本研究に関連する外部の専門家や実務家と議論する場を設け、現実の社会におけるエネルギー・環境に係る情報提供の在り方についても考察する予定である。なお、可能であれば(当初の計画を超えるが)、地球温暖化防止に加えて、再生可能エネルギー推進など別の情報提供実験を行い、エビデンスを集めることが出来ればと考えている。
|
Causes of Carryover |
繰越額(38円)の発生は、研究課題遂行上必要不可欠な物品等で、定められた期限内の納品が確実に見込めるものを、分担者(青木)が所属する研究機関(富山大学)と検討したが、該当する品目がなかったことに起因する。よって、不必要なものを購入してまで分担金を使い切るという、不適切ともいえる使途をあえて回避した結果である。なお、次年度に本金額を使用するにあたっては、研究課題の遂行に必須となる筆記用具(例:ボールペン等)の購入に充てる計画である。
|