2019 Fiscal Year Research-status Report
流域ガバナンスにおける環境再生への政策転換:政策過程分析による新展開
Project/Area Number |
19K12458
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大野 智彦 金沢大学, 法学系, 准教授 (30531884)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ダム撤去 / アドボカシー連合フレームワーク / 流域ガバナンス / 荒瀬ダム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、(1)ミクロレベルでの詳細な質的分析、(2)マクロレベルでの俯瞰的な計量分析、(3)流域ガバナンス研究のための分析概念・方法論の改善の3つのサブテーマを設定している。今年度はこのうち、テーマ(1)と(3)について特に研究を進めることができた。テーマ(1)に関連しては、本研究課題の前身となる研究課題から継続して分析を進めている荒瀬ダム撤去について、計画通り既収集データ(新聞記事、インタビュー記録など)の分析を進めることができた。 分析に際しては、複雑な流域ガバナンスの研究に際して有用だと思われるアドボカシー連合フレームワーク(Advocacy Coalition Framework)を活用し、ダム撤去というある種の政策転換が実現した要因として、政策サブシステムの外部変動、内部変動、アクターの学習が挙げられることを確認した。 一連の分析においては、アドボカシー連合フレームワークを用いた先行研究をサーベイし、新聞記事などの質的データから政策アクターの政策信念を推定する方法や、類似した信念を有する連合を抽出する手法を整理し、荒瀬ダム撤去の分析に適用することを試みた。さらに、日本におけるアドボカシー連合フレームワークを用いた先行研究を、他の研究者と共同で網羅的にレビューすることも行った。これらは、テーマ(3)に関する成果である。 以上の研究成果は、日本行政学会2019年大会や国際シンポジウム「地域の持続可能な未来へ、レジリエンス思考からの挑戦」において報告すると同時に、学術雑誌への投稿を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、テーマ1に関して当初予定していなかった研究発表の機会を得ることができたため、その推進に注力した結果、テーマ2に関するデータベース作成が遅れてしまった。ただし、令和2年度は新型コロナウィルスの影響で現地調査を行うことが困難だと思われるので、その分、テーマ2の遅れを取り戻し、進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
少なくとも令和2年度については新型コロナウィルスの影響によって予定していた現地調査を行うことができないと思われるが、既に収集している資料の分析や、新型コロナウィルスの影響をあまり受けないと思われるテーマ2、3を当面進めていきたい。また、研究会の開催については、オンラインでの実施可能性を探りたい。
|
Causes of Carryover |
テーマ2に関する遅れが生じたため、使用予定であった資料収集や整理のための費用が次年度使用額として生じた。次年度はテーマ2に関する研究が主となると思われるので、当初の計画に準じて使用していきたい。
|