2019 Fiscal Year Research-status Report
Environmental valuation of alternative fuel vehicles in Japan and China
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19K12461
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 謙太郎 九州大学, エネルギー研究教育機構, 教授 (30344097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板岡 健之 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (90553959)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境評価 / 次世代自動車 / BWS |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、(1)BWSを適用したアンケート調査結果の分析、(2)水素ステーションの最適配置、(3)中国における予備調査、(4)韓国との電気自動車調査結果の比較を行った。環境経済・政策学会において、次世代自動車と交通システムに関する企画セッションを開催し、今後の研究方向性を明確にするための議論を行った。 (1)では、インターネットアンケート調査結果の計量分析を実施した。次世代自動車とガソリン車を比較するBWS分析を行うとともに、自動運転レベルを追加した比較実験を行った。その結果、販売実績の高いハイブリッド車へのWTPが高く、電気自動車、プラグインハイブリッド車はそれに次ぐWTPが得られたが、クリーンディーゼル車はマイナスのWTPとなり、燃料電池車は統計的に有意ではなかった。交差項を用いた要因分析を実施した。 (2)では、水素ステーションの配置モデルとしてPメディアン手法を使用し、現状の100基配置から200基配置に、そして400基配置に増加させた場合の燃料補給利便性を明らかにした。また、燃料電池車が、一般ユーザーに幅広く受容されるには、水素ステーションの配置及び総数に加えて、営業形態や営業時間の設定も重要である。そのため、2020年1月時点での営業状況及びステーションの性能に関する情報を整理統合し、今後2年間の研究期間中の整備状況との比較分析を行うためのデータアーカイブを構築した。 (3)では、2020年2月に中国(上海、北京)において、本格的なBWS実験を実施する前段階のフィージビリティ調査として、電気自動車等の所有状況に関する調査を行った。その結果、標本の14.2%(295人)が電気自動車を所有しており、車種や購入価格等の情報が得られた。 (4)では、日本で実施した電気自動車に関するBWS調査の枠組みに基づき、韓国における比較調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究3年間の初年度では、マルチプロファイル型BWSを適用したアンケート調査及び中国における予備調査を実施する予定であったが、十分に信頼性の高い調査に必要となる予算配分額の問題もあり、オリジナルな調査に振り向けることは得策ではないと判断した。そうした状況を踏まえて、本研究開始直前の時期に、調査研究者と調査分担者が、次世代自動車全車種と燃料電池車のみを対象とした十分な標本を得る機会があり、本研究の調査計画を前倒しし、信頼度の高い、十分な標本数のデータを得た。当研究プロジェクトにおいて、それら独自の収集データを利活用し、2019年度はBWS手法を適用して得られたデータの詳細な計量分析に専念することができ、国内外での学会報告、論文執筆等に集中的に取り組むことができた。 COVID-19の影響により、自動車産業が大幅な生産減少、消費減退に見舞われる中、日本と中国に加えて各国の政策動向及び電気自動車保有動向に関する調査結果が得られた。水素ステーションの最適配置に関する課題について信頼度の高い研究成果が得られるとともに、営業時間や整備状況等を加えたアーカイブ化を開始することが可能となった。 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた水素ステーションと電気自動車の普及が政府や企業により進められる中、COVID-19とオリンピック・パラリンピック延期という事象が重なったことは研究課題の遂行に多大な影響があるが、それを研究対象の多様化としてとらえることが必要である。研究期間最終年度までに関連する情報を収集し、調査研究に適宜反映させ、研究課題をより洗練させることが責務である。時系列での比較研究を行うための準備は、2019年度中に十分に実施できた。また、当初想定していなかった韓国のデータも共同研究に取り込めたため、東アジア全体を俯瞰した比較研究としての厚みが増したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主要な課題は、次世代自動車の消費動向をBWS手法により明らかにすることである。また、環境経済評価手法としてBWS手法は新規性があり、多くの研究者が取り組み始めているところであるため、手法開発と分析事例の蓄積が重要である。 2019年に中国における次世代自動車関連の政策変更があり、2020年以降は日本と世界市場で次世代自動車の車種選択が増えることが予定されている。そうした状況変化を踏まえた消費者選好の変化を明らかにすることが主目的である。 COVID-19の収束時期が見通せず、予期される大幅な世界的経済停滞の影響を踏まえて、適切な調査実施時期とその調査内容を注意深く検討する必要がある。また、家庭用蓄電池の普及が急速に進み、電気自動車の廃充電池利用も活発化する中で、V2H(Vehicle to Home)と呼ばれる電気自動車を利用した給電システム等も視野に入れた研究を展開する必要がある。中長期間に亘って影響を与える世界的なパンデミックと経済停滞という重大事象の影響を踏まえつつ、日中における次世代自動車や自動運転を含む交通システムの変化に対して、多角的にアプローチする必要がある。BWS実験内容に、多様な要因を組み込むため、エネルギー市場や電力市場の変革も十分に視野に入れて研究を遂行する計画である。
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Research Products
(13 results)