2019 Fiscal Year Research-status Report
公害経験の継承に向けた公害資料館の社会的機能の研究
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19K12464
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
清水 万由子 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (60558154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 聡彦 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40202791)
清水 善仁 法政大学, 大原社会問題研究所, 准教授 (30437181)
除本 理史 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60317906)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公害資料館 / 公害 / 負の遺産 / パブリック・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題が明らかにしようとする①継承されるべき公害経験の内容、②効果的な公害経験継承の方法、③公害経験継承が人類社会に対して持つ普遍的意味、を検討するにあたり、研究開始にあたり(1)先行研究の整理、(2)公害資料館に関する研究発表、(3)公害資料館ネットワークとの連携による研究会開催を実施した。 (1)は、「負の遺産」の継承に関する論考を集め、本研究課題との関連についてオンライン研究会にて集中的に議論した。その中で、欧米諸国で議論が蓄積されつつある「パブリック・ヒストリー(Pubilic History)」概念を公害経験継承への適用することで公害資料館の社会的機能を明らかにできるかどうか、その可能性を検討した。公害資料館がパブリック・ヒストリー実践の一翼を担いうると言えるかどうかは今後事例研究を重ねて検討する予定である。 (2)はICOM(国際博物館協会)京都大会の国際マネジメント委員会部会で公害資料館の取り組みとネットワーキングについて発表し、公害資料館の活動と親和性の高い人権博物館の国際的なネットワーク(国際人権博物館連盟)とのつながりができた。その他、第59回環境社会学会大会においても実践報告を行ない、公害経験の継承と公害資料館のネットワーキングいう実践から学術的な研究課題を導く際の論点について議論した。 (3)では、第9回公害資料館連携フォーラムin倉敷において、国立療養所「長島愛生園」歴史館関係者を招いた研究会を開催し、ハンセン病問題継承の取り組みについての話題提供を受けて、公害資料館関係者と共に学ぶべき点について意見交換した。 これら実施内容から、研究目的のうち②効果的な公害経験継承の方法、③公害経験継承が人類社会に対して持つ普遍的意味については世界的な研究動向に照らして明らかにできる見通しを持つことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を修正し、先行研究のレビューに注力したことで、理論的な枠組みの検討は当初の予定を超えて進んだ。とりわけ欧米で30年以上にわたり議論の蓄積があるパブリックヒストリー概念は、公害資料館の社会的機能を明らかにするための参照軸となりうると考えられる。 一方で、初年度は本格的な現地調査は行わなかったため、次年度以降は上記の理論的枠組みを持って公害資料館の実態調査を行う必要がある。しかし、公害資料館の実態については、公害資料館ネットワークとの連携によって常に情報交換を行っている状況であり、今年度も公害資料館連携フォーラムin倉敷において全国の公害資料館関係者と交流の機会を得た。 したがって、本研究課題は研究目的の達成に向けて概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、理論的枠組みの検討と並行して、公害資料館の実態調査を行っていく必要がある。理論的枠組みの検討に向けて、引き続き海外の研究動向をリサーチしていく必要があるため、今年度と同様にオンラインでの研究会を頻回に実施し、先行研究のレビューを進める。また、関連分野の専門家との議論の場を設けるなどして、検討を進める予定である。 また、公害資料館の実態を明らかにするため、現地を訪問してのヒアリング調査を計画しているが、新型コロナウィルス感染拡大により現段階ですでに調査計画の変更(延期)が生じている。代替的な方策を模索するとともに、研究目的を達成するための調査が不可能な状況が次年度半ばまで続く場合には、別の方法で研究目的を達成するよう、研究計画を再検討のうえ変更する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、研究代表者・分担者および研究協力者が集まって研究会を開催する予定だったが、日程調整の困難からオンラインで研究会を開催することになり、研究会開催のための旅費を使用しなかった。また、公害資料館の現地調査を予定していたが、今年度は文献レビューを優先的に行ったため、研究代表者・分担者および研究協力者全員が参加する現地調査を実施しなかったため、調査のための旅費を使用しなかった。 次年度は、研究会は引き続きオンラインで実施するため、研究会旅費は、現地調査と、研究会に招聘する専門家への謝金等に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)