2019 Fiscal Year Research-status Report
The Reinterpritation of the Northeast Asian Cold War History by the ROK's Multilateral Diplomacy: Focusing on the Period of the End of Cold War
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19K12471
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木宮 正史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30221922)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 朝鮮半島 / 北方外交 / 米韓関係 / 日韓関係 / 中韓関係 / 韓ソ関係 / 冷戦 / 韓国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年5月の韓国出張時に韓国外交史料館にて収集した1988年分韓国外交史料の分析を行った。特に、1988年は、韓国の民主化が達成され、それまで進められてきた北方外交についても可視的な成果が収められたことによって、盧泰愚大統領による7・7宣言が出され、本格的に北朝鮮に対する体制優位に基づく新たな外交が展開される時期である。こうした中で、韓国外交を、対米や対日などの対「同盟国」外交、中ソなどの共産圏外交、そして、1980年代初頭までは南北外交競争の「草刈場」でもあった、対第三世界外交など、その多角的な側面に焦点を当て分析を行った。 その結果、韓国外交が単に国際冷戦の変容に機敏に対応したのみならず、朝鮮半島冷戦を自らなりの方法で打開しようとした明確な課題を担っていたことを明らかにすることができた。とかく、韓国政治は、1987年の民主化を境界として民主化以前と民主化以後に断絶して理解される傾向にある。しかし、北方外交などの外交に関しては、そうした政治変動を超えて一貫して追求されてきたことを明らかにすることができた。こうした点はまだ学術論文の形にはなっていないが、韓国外交文書のみならず、日米などの外交文書も参照して学術論文を完成させるたいと考えている。 ところで2019年度は、2018年10月の徴用工問題に関する韓国最高裁判決をめぐって日韓間の緊張が激化した時期でもあった。7月から8月にかけての日本の対韓輸出措置の見直し、日韓軍事秘密情報保護協定の延長などをめぐり、高まった日韓間の緊張に関して、それまで日韓関係や朝鮮半島をめぐる国際関係に関して行ってきた分析に基づいて、歴史の中に今日の日韓関係を位置づけ、そうした知的作業に基づいて、この緊張をいかに解すことができるのか、そうした政策的分析と提言もおこなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
何よりも、学内行政において専攻長という立場で45名の教員を束ねる立場に置かれたこともあり、学内にいる大部分の時間を行政の時間に取られたこと、さらに、責任者として出席を義務づけられた学内の会議が多いために、なかなか国内出張や外国出張の機会を持つことができないことなどが、研究の遅れの最大の理由であった。幸い、2020年3月末で、こうした管理職からは解放されることになったので、今まで十分にはできなかった研究を思う存分することができると期待している。 しかし、そうした最中、2020年1月から全世界を新型コロナウィルス問題が席巻したために、特に、2月、3月は予定していた韓国出張なども行うことができず、1989年度分の韓国外交史料の収集を行うことができなかった。こうした状況がいつまで持続するのか予測が不可能であるが、ともかく、従来収集した日米韓の外交史料を再検討する時間にしたいと考えている。とは言え、自らの研究を発表する国内学会や国際会議の開催が中止、延期される状況であり、そうした研究者間の知的交流が限られている状況では、自分一人だけの研究にも限界があると見なければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、新型コロナウィルス問題をめぐる国内外の状況が改善されたという条件であるが、できるだけ早く韓国外交史料館を訪問して、2020年4月に公開された1989年分の韓国外交史料に関する収集、検討作業を進める。そうした知的作業によって、韓国北方外交に関する実証的分析を進めると共に、1980年代、ちょうど冷戦の終焉直前の韓国外交の全体像を明らかにするという作業に取り組む。そのうえで、そうした研究成果を国内外の学会、会議などを通して発表し、その批判をうけたうえで、もう一度再検討するというフィードバック作業を行う。 そのうえで、不透明ではあるが、まずはオンラインで利用可能な米国外交史料を再検討しながら、可能であれば訪米し、米国国立公文書館や議会図書館、レーガン大統領記念図書館などを訪問し、同時期の米国の外交史料を収集補完することで、韓国の北方外交に関して米国がどのような味方をしていたのかを明らかにする。一方で、韓国の北方外交を支援した側面もあったが、他方でそれを疑念を持って見ていたという二重性があると考えられるので、そうした点を明らかにしたい。 さらに、日本の外交史料に関しては、まだ未公開の部分が多いことは承知しているが、利用可能な範囲で日本の対韓、対朝鮮半島外交についても明らかにしたい。特に中曽根外交によって、日本外交における韓国、朝鮮半島の比重は飛躍的に上がっただけに、なぜ、こうした変化が起こったのかを日米韓の三カ国の視点から、さらには、中ソの関わり方なども射程に入れて分析を加える。 最後に、新型コロナウィルス問題の克服以後ということになるが、徴用工判決に起因する日本企業の在韓資産の現金化措置という問題が残っているだけに、新型コロナウィルス問題や歴史問題をめぐる日韓関係も注視しつつ、必要ならば政策提言を行いたいと考える。
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Causes of Carryover |
自分自身が学内行政における管理職であったこと、そして、2020年以後は新型コロナウィルス問題に伴う海外渡航の困難さのために、予定されていた外国出張を行うことができなかったために次年度使用額が生じた。 2020年度は、予定されていたが延期された外国出張を行うべく鋭意努力するが、新型コロナウィルス問題の状況次第であり、今後とも状況を注視しながら外国出張の機会をつかまえたい。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] 朝鮮半島情勢と日韓関係(韓国語)2019
Author(s)
木宮正史
Organizer
International Leadership Conference“Toward Peace and Security in Northeast Asia: Interdependence, Mutual Prosperity and Universal Values
Int'l Joint Research / Invited
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