2020 Fiscal Year Research-status Report
The Reinterpritation of the Northeast Asian Cold War History by the ROK's Multilateral Diplomacy: Focusing on the Period of the End of Cold War
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19K12471
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木宮 正史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30221922)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 米中関係 / 日韓関係 / 日米韓関係 / 新冷戦 / 米韓同盟関係 / 中韓関係 / 歴史問題 / 北方外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はコロナ禍のため外国出張が全くできなかったため、米国および韓国などへの出張による米国外交史料や韓国外交史料に関する調査ができなかった。その代わり、既に刊行されている朝鮮半島関係の資料を購入して、それに対する調査を行うことを行った。また、オンライン会議による韓国人研究者との情報交換を積極的に行うことにより、1980年代における韓国外交史研究に関する最先端の研究に関する新たな知見を獲得することができた。 第一に、特に、1980年代に入って本格的に実行されるようになった、韓国の北方外交に関して、一方で、同盟国である日米との協力体制の下で行われた側面と、他方で日米とは自立的に行った側面があることを明らかにした。これは、特に1990年代以降のポスト冷戦期における韓国外交の同盟外交とそれ以外の外交をいかに両立させるのかという課題を考察する上で、その前史にも該当するものであり、ポスト冷戦期の韓国外交の展開を考察するうえで、非常に重要な示唆を得ることができた。 第二に、まさに2020年、米国大統領選挙の結果、バイデン民主党政権が登場し、米中関係が新たな緊張関係に突入しつつある状況下で、「安全保障は米国、経済は中国、北朝鮮問題と統一問題は米中」と表現されるような韓国外交が、いかに対米外交と対中外交との両立を模索するのかについて、上記のような前史としての冷戦末期の韓国外交を参照しながら分析することを試みた。さらに、ある意味では類似の状況に置かれながらも異なる選択をしつつある日本外交との比較を試みた。 第三に、歴史問題をめぐる緊張がある意味では恒常化する日韓関係において、一方で日韓の協力がそれぞれの外交の選択の幅を広げる可能性を持ちながらも、他方で関係の緊張がそうした協力の可能性を封じ込めていることが、歴史問題をめぐる日韓緊張にも拍車をかけていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ状況で外国出張ができなかったために、訪米や訪韓による米国国立公文書館や議会図書館での外交文書調査や資料収集、さらに韓国外交史料館や国会図書館、国立中央図書館などでの外交文書調査や資料収集ができなかった。したがって、最新の公開資料に接することができなかったために、最新資料を利用した新たな研究に取り組むことはできなかった。 その代わり、オンライン会議などによる情報交換やオンラインによる資料収集を利用することによって、さらに既に刊行されている北朝鮮関連の資料集を韓国から輸入し購入することによって、ある程度の研究の遅れを取り戻すことができるようになった。但し、やはり、最新資料については、オンラインで公開されているわけではないので、やはり可能な限り米国や韓国の現地を訪問して、外交文書を閲覧して、必要な部分を収集しなければならない。こうした研究作業に関しては、コロナ禍の状況を横にらみしながら取り組まなければならない。 ただ、その他、韓国外交の現状や日韓関係の現状などに関しては、新聞や雑誌の紙媒体はもちろん、オンラインで、新聞、雑誌、さらには放送などの情報に接することができるために、それほどの不便はなかった。また、オンラインにて韓国人研究者との情報交換に努めると共に、米国のシンクタンクなどによるオンライン会議に積極的に参加することによって、リアルタイムでの情報収集についても、それほどの不便は感じなかった。 そして、日韓関係の現状については、オンラインにおける会議に報告者や討論者として積極的に参加することによって、日韓関係の現状に関する分析を行うと共に、そうした現状が日韓双方の外交の選択肢を広げるために、どのような点で障害になっているのか、さらに、それをどのように克服していくのか、政策提言を積極的に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
とりあえず、コロナ禍の進捗状況、日本のみならず、米国、韓国の状況を横目で睨みながら、訪米と訪韓の可能性を模索して、可能な限り米国、国立公文書館および議会図書館における調査の実現、韓国外交史料館および国会図書館、国立中央図書館における資料調査の実現を試みる。そのうえで、そうした最新資料の収集と調査検討を試みることによって、1980年代末、韓国の本格的北方外交をめぐって、一方でどのような点で日米韓が協力したのか、他方で、どのような点で葛藤があったのかを、マルチアーカイブな研究手法を通して明らかにする。 次に、そうした冷戦末期の韓国外交に対する分析を参照しながら、韓国外交がポスト冷戦期、特に中国との関係に焦点を当てて、日米との同盟・協力国との外交をいかに利用しながらも、中国という新たな協力国との関係を構築していったのか、そうした対日米外交と対中外交との連携、葛藤関係を明らかにする。 そのうえで、そうした韓国外交と日本外交とを比較検討することを通してどのような点で異同があるのかを明らかにしたうえで、現実に、そうした乖離を接近させることができるのか、もしくは、そうした乖離が増大するしかないのか、日韓外交の比較検討作業を通して、現在の葛藤に満ちた日韓関係の現状を克服するための処方箋を提示することを試みる。
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Causes of Carryover |
何よりもコロナ禍のため、米国や韓国への数回にわたる外国出張の計画が全て実行できなかったのが最大の理由である。2021年度については、コロナ禍の収拾状況を見ながら、今までできなかった米国および韓国への外国出張と、それによる米国国立公文書館や韓国外交史料館における資料調査と資料収集を行うことにより研究資金を使用する計画である。さらに、韓国で最近出版されている、北朝鮮および南北関係に関する貴重な資料集について、それを購入することで、研究に資することを考えている。
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Research Products
(11 results)