2020 Fiscal Year Research-status Report
中国における都市化と「都市農村越境コミュニティ」の生成に関する実証的研究
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19K12472
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
南 裕子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40377057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
閻 美芳 宇都宮大学, 雑草と里山の科学教育研究センター, 講師 (40754213)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市農村越境コミュニティ / 都市農村結合部 / 逆都市化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、コロナウイルスによる感染症拡大のため、当初予定していた中国での現地調査、ワークショップを実施することができず、文献研究への変更を余儀なくされた。 研究代表者と研究分担者は、オンラインミーティング等によって、6月、10月、2月、3月に研究会を行い、研究の進捗状況や研究計画変更について議論を重ねた。また、3月には、中国家族・農村研究に携わる日本国内の研究者との合同研究会で、本研究課題について報告を行い、意見交換を行った。 令和2年度に得られた研究成果は、主として以下2点である。(1)令和元年度の北京現地調査結果の分析の深化、(2)都市農村越境コミュニティに流入する都市民の動向の把握。 (1)については、都市農村結合部の土地制度、土地問題、コミュニティ政策、城中村の再開発手法など、都市農村越境コミュニティにかかわる政策、制度について論点整理を行い、事例地域の位置付けや意味を再検討した。また、都市農村越境コミュニティの存立構造に関わる問題として、都市農村越境コミュニティ形成に伴い生じる地域内の緊張関係とその顕在化を抑制する地域社会の論理について考察した。これは、既存の中国農村社会論に対して新たな展開を試みるものであった。これらの研究については、2020年10月31日に開催された、第93回日本社会学会で、研究代表者と分担者はそれぞれに報告を行った。 (2)は、農業や自然とかかわる生活を求めさらにそれを起業につなげようとする都市民、農村振興を目的とするNPOなどを研究対象とするものである。中国の研究者の間では、新しい研究分野である「逆都市化」現象として、議論され始めている。令和2年度は、学術雑誌や各種メディアの記事等での紹介、NPO団体や個人がweb上で発信するニューズレター、NPO主催のオンラインセミナーの視聴などを通じて、その動向の把握に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題は、中国での現地調査、それを踏まえた現地研究者との研究会開催を中軸として実施するよう計画している。2年目にあたる令和2年度は、現地調査日数も増やし、これまで調査を継続的に行ってきた北京市近郊以外の地域を対象として、都市農村越境コミュニティの多様性を把握すると共に、通底する特徴についての分析を深めることを目的としていた。 しかしながら、令和2年度は、コロナウイルスによる感染症拡大により、中国への渡航可能性について先の見えない状況が続き、結局、現地調査を実施することができなかった。調査の性質上オンライン調査に切り替えることは難しく、文献調査のみでは研究の進展に限界があったため、上記の評価区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度後半に中国への渡航が可能になるという想定の下ではあるが、当初の計画通り、現地調査、文献研究、国内外での研究会活動により、以下の研究課題をめぐって本研究を推進する。 (1)本研究では、都市農村越境コミュニティにいくつかの類型を設定しているが、その中で、都市計画により、都市的環境の整備された団地へ移転するパターンについては、本格的な調査は未着手である。これを進め、令和元年度の調査で得られた知見・論点との比較を行う(江蘇省太倉市の中心市街地周辺部の調査を予定)。 (2)農村ツーリズムにより地域の開放性が高まった地域では、都市から流入した経営者による洗練されたツーリズムビジネスが、地元農家による従来の民宿経営を淘汰する可能性もうかがわれる。こうしたパターンの都市農村越境コミュニティの形成については、ルーラルジェントリフィケーション論の枠組みからの検討も可能である。この問題について、新たな調査地を加えて研究を深める。浙江省湖州市を調査候補地とし、同地をフィールドとしている中国の研究者との研究会開催も計画する。 (3)令和2年度に引き続き、都市農村越境コミュニティに流入する都市民に関する実態把握と分析を行う。一般に公開されている資料からの情報収集のほかに、令和3年度には、NPOや起業家など当事者へのインタビューを行う。 (4)最終年度として、研究総括の国際ワークショップを開催する(開催予定地:一橋大学)。中国から研究者を招聘するほか、国内の中国研究者にも幅広く参加を呼び掛ける。
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Causes of Carryover |
本研究は、中国での現地調査、それを踏まえた現地研究者との研究会開催を中心とするものであり、2年目にあたる令和2年度は現地調査日数も増やし、旅費・謝金に予算を多く計上していた。しかし、コロナウイルスによる感染症拡大のため、結果的に、中国での現地調査、研究会開催が不可能となり、次年度使用額が生じることとなった。 この費用は、令和3年度の中国現地調査、国際ワークショップ開催、インタビュー調査音声データの文字化(テープおこし)、論文翻訳(英文・中文)のための経費に充てる。
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Research Products
(3 results)