2020 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるベトナム人介護留学生急増の背景と受入の持続可能性に関する人類学的研究
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19K12475
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
比留間 洋一 静岡大学, 国際連携推進機構, 特任准教授 (30388219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 ゆかり 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (60469484)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ベトナム人介護留学生 / 外国人介護留学生 / 外国人介護人材 / ベトナム看護 / 留学生移動 / 留学生教育 / 介護福祉士国家試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究実績は介護留学生の国家試験学習に関する調査を実施したことである。 1.背景:2019年度に実施した研究会において、留学生本人と養成校教員の現行の自助努力だけでは国家試験合格率の向上は難しいとの示唆が得られた。 2.目的と方法:その解決策として、元介護留学生の合格者によるベトナム語でのオンライン勉強会を行い(2020年10月~2021年1月、計11回)、その効果や課題を明らかにする調査を実施した。勉強会参加者の背景情報、勉強会の観察データ、インタビュー・データ(熱心に参加した7名)を収集した。 3.結果と考察:7名のうち合格者は3名であった。しかし「介護留学プログラム」2020年度受験生4名(ベトナムの看護短大卒者)は全員不合格であった。収集したデータ解釈について、共同研究者間で検討した結果、看護短大卒者の国家試験合格の阻害要因として主に次の4つの知見が得られた。①オンライン勉強会後は合格への意欲が高まり各自が努力した結果、点数は伸びたが、合格点に届かなかった(1年生などできるだけ早い時期に母国語による学習支援が必要)、②学校の授業では理解できないことが多く(特に認知症、障害、社会保障制度などの細かい分類)、それを自宅で勉強しても正しく理解することが難しい(一方、オンライン勉強会でのベトナム語での説明により、意味が理解できると暗記もできるようになった)、③介護の専門知識があっても誤答する場合があることから、介護の専門知識やJLPTの日本語能力のみの問題ではなく、読解過程・解答過程に困難点がある、④留学生本人、養成校教員への支援に加え、アルバイト先の介護施設との連携強化(「現場の実践」と「教科書の理念」との違いについての指導や、国家試験直前の時期に勉強に集中できる環境等が提供されること)が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.上述の通り、日本語能力(入国時N3)も合格への意欲も高いにもかかわらず介護福祉士国家試験に合格できない理由について、深い理解が得られた。 2.また以下の通り研究成果を発信することができた。 1)EPA介護福祉士に関する研究成果と、それとの比較の視点から介護留学生に関する研究成果について、著書(分担執筆)、論文、講演として発信した。2)また、厚生労働省 老人保健健康増進等事業「介護職種に係る技能実習生の受入れの実態に関する調査研究」検討会及びワーキンググループ委員としての活動を通じて、介護留学生に関する研究成果を政策立案のための調査研究に還元した。 3.しかし、今年度もコロナウィルス感染症に伴う渡航制限のため、ベトナム現地調査は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今後もコロナウィルス感染症に伴う渡航制限がいつ解除されるか見通せないため、ベトナム現地調査の計画を変更し、以下の研究(日本国内)にエフォートを集中させることとする。 2.これまでに得られた知見を踏まえた、「2021年度オンライン勉強会」とその効果・課題に関する調査研究を実施する。 3.新たに日本語教育の専門家(読解に詳しい日本人と、漢越語に詳しいベトナム人)を共同研究者に加え、主に上述した「介護留学生プログラム」生を対象として、介護福祉士国家試験(及び模擬試験)の読解過程コーパス(試験問題を読んでもらい、その理解過程をベトナム語で話してもらい、それを文字化し、日本語訳をつけたもの)と解答過程についてのインタビュー・データを構築し、それを分析することで、読解・解答過程の困難点を解明する。 4.学会やシンポジウムでの口頭発表、日本語・英語での論文作成を通して、研究成果の発信と社会への還元に努める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限のため、当初計画していたベトナム現地調査が実施不可能となったことによる。使用計画は、今後も渡航制限解除が見通せないため、国内調査(主に読解コーパス作成に係る謝金等)へと変更する。
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Research Products
(10 results)