2022 Fiscal Year Annual Research Report
中国の台湾政策に関する一考察―台湾産農産物の大陸輸出と台湾社会への影響-
Project/Area Number |
19K12482
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
下野 寿子 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (40294607)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台湾産パイン / 対中果物輸出 / 蔡英文政権 / 屏東県 / 民進党籍県長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮して研究計画を1年延長した。2019年度は現地調査を実施できたが、その後は訪台できなくなったため、ウェブサイトや図書館の相互貸借等も利用しながら資料収集に努めた。2022年度には一部の地方政府のウェブサイトにアクセスできなくなり、研究計画を適宜修正しながら進めた。 研究期間中の成果は、①「屏東県の民進党籍県長が推進した対中果物輸出に関する考察」②「台湾の対中果物輸出に関する国内議論の考察」③「潘孟安の果物農家への支援―馬英九政権下の民進党立法委員時代と屏東県長就任後―」④「台湾産パインの政治経済学―中国からの残留農薬に対する警告と輸入停止措置を事例として―」⑤「利害関係交錯下的両岸農業交流 1990年代後期以後」⑥「台湾の対中農業投資の位置づけに関する一考察」⑦「対中果物輸出は生産地社会を変えたのか―屏東県を中心とする部分的考察―」である。①~④は研究ノート・論文で⑤~⑦は研究会・学会での口頭発表である。 2022年度の成果である④は、パインの対中輸出で発生した2015年と2021年の問題に注目し、政治経済学的視点から分析したが、政治社会学の影響も受けた。ここでは、台湾産パインが馬英九政権時代に急速に対中依存度を高めたことを背景に、2015年に中国当局から残留農薬の問題を指摘された際に台湾側の関係者が取った対応と、2021年に中国当局が台湾産パインの輸入停止を通告した際の台湾政府および二大政党の対応について論じた。論考より、2015年に発生した残留農薬問題について、①の研究ノートで論じた屏東県政府の視点との関連性を確認した。また、民進党と国民党では果物輸出の方針が異なり、前者は市場多元化志向で後者は中国市場志向であることを確認した。新型コロナの影響により研究範囲は当初計画より縮小したが、屏東県を中心に考察を深めることができた。
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