2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K12498
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
中野 裕考 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (40587474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Hasegawa Nina 上智大学, 外国語学部, 教授 (70308112) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 哲学 / ラテン・アメリカ / 前近代 / 漢意 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年5月に開催される予定だった日本哲学会International Sessionが1年延期となり、2021年5月にオンラインで実施された。ペルーの哲学者Mario Mejia Huaman、メキシコの哲学者Adalberto de Hoyos、日本思想史を専門とする倫理学者板東洋介の3氏が、研究代表者を司会として「前近代の知的遺産の哲学的意義」をテーマに、各地の知的遺産の意義を論じあった。ラテン・アメリカを哲学という見地から捉えるとき、スペイン語を第一言語とする主体が20世紀末に至るまで一貫して規定的な役割を果たしてきた。しかし西洋哲学とは異なるラテン・アメリカ独自の哲学的寄与を考えるとき、先スペイン期以来の言語と文化を受け継いでいる先住民のもつ可能性を無視することはできない。ところが従来は、先スペイン期には大部分が無文字社会にあった先住民は「文盲」として教育や啓蒙の客体という位置に固定されてきた。21世紀に入ってようやく少しずつ、先住民が自らの世界観を自らの言語で表現するし、また彼らの声を聞きとろうという機運が高まりつつある。Mejia Huaman、de Hoyosはそれぞれの立場からこの潮流に掉さす自らの実践を紹介してくれた。彼らの哲学運動が、西洋哲学とは異なる日本の哲学の発展にとってもつ意味は小さくないはずで、そのことは板東の報告と彼らの報告と交差から確かめられた。哲学の分野では日本とラテン・アメリカの本格的交流は実質的にはこれが初めてとなるという事情も手伝って、この機会はたいへん有意義な成果となった。この延長上で、研究代表者は2022年3月に比較思想学会にて、本居宣長の漢意批判のラテン・アメリカ先住民哲学への応用可能性について論じた。これらの成果は、研究代表者が所属するお茶の水女子大学から電子書籍という形で、英語にて2022年には出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度に、メキシコ、ペルーを訪問し、現地における哲学研究状況の調査をする予定だったのだが、海外訪問が難しくなったためこの調査が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、前年度に予定していたメキシコ、ペルー訪問をぜひ実現したい。難しい場合にはペルー一国に絞り、現地発の哲学を試みている研究者とのコンタクトを開拓したい。ラテン・アメリカの出版事情は芳しくなく、日本における資料の入手可能性も極めて限られている。先住民の世界観をスペイン語だけでなく現地語でも表現しようとする動きを探るとなるとなおさら、実際に現地で、その地の研究者の案内を頼って調査する必要がある。前年度に確立されたMario Mejia Huaman氏とのつながりを頼りつつ、さらなるネットワークの拡大を図る予定である。 2022年度にはまた、前年度の成果を英文の電子出版という形にまとめるという課題を果たしたい。
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Causes of Carryover |
海外調査が実現できなくなってしまったため、海外訪問と滞在にかかる経費、および現地における案内への謝金に充てる予定だった費用が次年度に回った。2022年に海外訪問を実施することに充てたい。
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Research Products
(1 results)