2019 Fiscal Year Research-status Report
1970年代から80年代の日本のポピュラー音楽にみるアメリカ文化の影響
Project/Area Number |
19K12509
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大和田 俊之 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (20365539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シティ・ポップ / YMO / ヒップホップ / サンプリング / ポピュラー音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は音楽ジャーナリストとの共著1冊(『文化系のためのヒップホップ入門3』アルテスパブリッシング)、講演集の編著1冊(『ポップ・ミュージックを語る10の視点』アルテスパブリッシング)を上梓し、書籍化が決定しているweb連載2章分(『アメリカ音楽の新しい地図』webちくま、筑摩書房)、書評2本、辞典項目3項、さらに短い新聞コラムや文芸誌連載を執筆したのに加えて、国際学会で2度発表した(コロンビア大学北京センターにおける音楽研究ワークショップと、オーストラリアのキャンベラで開催された国際ポピュラー音楽学会)。本研究目的でも指摘した通り、1970年代から80年代の日本のポピュラー音楽への関心は国際的にますます高まっており、日米のレコード会社やラジオ局から特集番組の助言を求められてもいる。 とくに2度の国際学会では、シティポップと呼ばれる1970、80年代の日本のポップスと同時代のCM音楽の関係と、そのシティポップがヒップホップミュージックにサンプリングされる状況を分析した。前者は、専属作家制度が残る70年代初頭の音楽業界において、CM音楽がデビュー直後の「ニューミュージック」の音楽家にとって自己表現の場であり得たこと、また後者については、こうしたアフローアジアのコラボレーションが「哀愁」をキーワードに結びついている点を論じた。いずれも、英語での執筆を予定しているシティポップ論の重要な議論であり、20年度の研究に向けた準備ができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べた通り、本研究の目的は英語でのYMO論/日本のシティポップ論の執筆であり、2019年度に二度の国際学会で発表できたことは非常に大きい。4月の研究会は、アメリカの音楽研究者の企画の元、北京に集まった東アジアの研究者が(日本、中国、韓国、台湾)それぞれの地域の音楽文化について発表するもので、少人数ながら非常に密度の濃い情報交換がなされた。6月には国際ポピュラー音楽学会でシティポップについて発表し、あらためてポピュラー音楽研究者コミュニティーにおける注目度の高さに驚いた。この2度の国際学会発表を経たことで、議論の重要な骨子についてリサーチを進めることができたことは大きく、研究は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はサバティカルを取得し、ハーバード大学の客員研究員として研究を進める予定である。いよいよ英語でのYMO論/シティポップ論の執筆に取り掛かりたいと考えているが、まずは出版社へのプロポーザルの提出が喫緊の課題である。出版を考えている叢書の担当者(アメリカの大学の研究者)とも連絡を取り合っている。20年度は、6月に日本の学会のシンポジウムに登壇を予定していたが、今回のコロナ禍によって学会の中止が発表された。11月の国際学会にも東アジア音楽を対象としたパネルでプロポーザルを提出しているが、学会が開催されるかどうかいまだに結論は下されていない。ハーバード大学の図書館もいつ再開されるか発表されておらず、研究の進展に影響を及ぼす可能性もあるが、関係者とも連絡を取りつつ、できることから着実に研究を進めておきたい。
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Causes of Carryover |
学会に招聘した研究者(アメリカ、韓国、台湾)に東京で講演してもらうための謝礼を予算に計上していたが、ひとりの都合がつかなくなり、その謝礼(の一部)が次年度使用額として残った。20年度は、コロナ禍の影響により現在滞在しているアメリカでの研究が進まない可能性があるため、日本の関係者との連絡をとり、研究を補助してもらうための費用として使用したい。
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