2020 Fiscal Year Research-status Report
1970年代から80年代の日本のポピュラー音楽にみるアメリカ文化の影響
Project/Area Number |
19K12509
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大和田 俊之 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (20365539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | YMO / シティポップ / ヒップホップ / ポピュラー音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は特別研究休暇を利用し、ハーバード・イェンチン研究所(HYI)の客員研究員に応募し、採用された。任期が6月以降であるため、4月から5月までは同大学ライシャワー日本研究所に所属し、6月以降、HYIに移籍して2021年3月までマサチューセッツ州ケンブリッジ市に滞在した。 その間、書籍化が決定しているウェブ上の連載を完結させ、(「アメリカ音楽の新しい地図」全10回、webちくま、2021年9月に筑摩書房より刊行予定)、新聞紙上に日本のヒップホップシーンに関する短期集中連載を掲載し(「日本語ラップの現在」全5回、日本経済新聞)、国際交流基金シドニー日本文化センターで開催された永井博展に合わせてシティポップ論を寄稿した。「シティポップ」という用語の使用例を1970年代後半に遡って言説分析をすることで、同時代の日本社会とアメリカとの複雑な関係を炙り出した論文は英文に翻訳され、展覧会のカタログに掲載された。『三田文学』誌上で連載中の「ラップの詩学」も継続中であり、また昨年は米国に滞在中ということもあってブラック・ライヴズ・マター関連の取材、インタビューも受けた。 周知の通り、コロナ禍の影響により多くの国際学会が中止、または延期となったが、オンラインで開催されたアメリカ民族音楽学会(SEM)と所属先のハーバード・イェンチン研究所で発表する機会があり、それぞれYMO(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)のアメリカでの受容とその中国表象などについて分析した。懸案だったYMOの英文単著についてはサンプルチャプターを執筆、委員会による査読を経てBloomsbury社と正式契約に至り、今年度中に完成原稿を提出予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1970年代から80年代にかけて活動した日本の音楽グループ、YMOに関する英文単著刊行に向けて、サンプルチャプターを提出し、委員会の査読を経て出版社と正式契約に至った。今年度中に完成原稿を提出する予定であり、研究は概ね順調に推移しているといえる。また、国際交流基金シドニー日本文化センターで開催された永井博展にシティポップ論を寄稿し、海外での受容のキーパーソンであり、ライト・イン・ジ・アティック社のシティポップコンピレーションにかかわったマーク・マクニール氏と同展覧会でオンライン上で対談した。ハーバード・イェンチン研究所を通して知己を得たアジアの研究者とYMOや日本のシティポップの受容について情報交換できたのも、研究推敲上、大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は出版が正式に決まったYMO論を英文で執筆する。2020年度に行った二度の国際学会での発表がそれぞれ章を構成する予定であり、英文校閲者とも緊密に連絡を取りながら完成にこぎつけたい。また国際交流基金シドニー日本文化センターでの永井博展に寄稿したシティポップ論は、紙幅の関係上、割愛せざるを得なかった議論も多く、それを加筆したうえで国際ジャーナル投稿に備えたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、計画していた学会出張などが取りやめになったことが大きく、それに伴い研究遂行上のスケジュール変更を余儀なくされた。英文単著が正式契約に至ったので、2021年度は英文校閲費に充てる予定である。
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