2020 Fiscal Year Research-status Report
日本とインドネシアにおけるケアの循環―移民家族のウェルビーイングの実証的研究
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19K12512
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
合地 幸子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60836542)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インドネシア / 日本 / 技能実習生 / ケア / ウェルビーイング / 新型コロナウイルス感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、前年度の成果を受けインドネシアにおいて移民家族へ聞き取り調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により海外調査を実施することができなかった。そのため、国内における調査に重点を置き、日本に滞在しているインドネシア人技能実習生を対象とする聞き取り調査を実施した。具体的には、新型コロナウィルスの影響によりインドネシアへ帰国できなくなった、あるいは、帰国を延期したインドネシア人技能実習生の日本での生活状況およびの母国の家族の状況、家族との連絡頻度など、新型コロナウイルス感染症拡大によって受けた影響を中心とした聞き取り調査である。平行して、インドネシアにおける調査対象者とメールなどを利用して連絡を取り、インドネシアにおいて人々は感染症の蔓延という状況をどのように乗り越えていくかについて調査を行った。 本報告書を作成時点で明らかとなったことは、1)帰国できなくなったあるいは帰国を延期したインドネシア人の中で母国の家族にケアを必要とする者がいる場合、家族との連絡はこれまでより頻繁になっているものの、ケアの過程(病気治療の過程など)に日本に滞在する子供側からの具体的な介入は見られないこと、2)母国の家族の状況は感染症拡大との関連で語られることはないことである。これら調査のみで、インドネシア人全体の傾向を把握することはできないが、日本とインドネシアでは感染症に対する捉え方が異なり、それによってケアのあり方が異なることが想定された。ここまでの調査では、リスクに対する日本人とインドネシア人のレジリエンスの差異という課題が浮かびあがった。以上の研究成果は、初年度の研究成果と合わせて学会誌等で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、インドネシアにおける調査は出来なかった。一方で、日本に滞在するインドネシア人技能実習生に対する聞き取り調査は順調に進んでいる。現地調査が出来ていないため研究計画はやや遅れているが、現時点での研究成果の一部は以下で示す論文として公表した。1)では、日本で働くインドネシア人移住労働者と母国に残る家族の関係性を考察した。2)では、日本と台湾を事例に、現地社会における共生のあり方を比較した。今後は、次年度の研究の方向性を見直すことで研究の遅れを取り戻す予定である。 1)合地幸子.2021.「人の国際労働移動を通してみる親子の関係性―インドネシア人技能実習生とその家族を中心に―」東洋大学アジア文化研究所『研究年報』(55), 21-31. 2)合地幸子.2021.「インドネシア人移民の就労地における共生―東日本地区と台湾宜県の比較―」長津一史(編)間瀬朋子・小池誠・合地幸子(著)『インドネシアにおける移民労働の社会経済的意味―漁船員・水産加工労働者から考える―』Toyo University ACRI(Asian Cultures Research Aistitute) Research Paper Series: (2), 29-34.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、1)本研究の軸となる移民家族の間に見られるケアの循環について、新型コロナウイルスの時代との関連をもって研究を継続する、2)インドネシアでの調査が可能となるまで、Webアンケートやオンラインでの面会(Zoomミーティングなど)を利用して進める。本研究は特に高齢者ケアに注目して母国に残る家族のウエルビーイングに注目してきたが、新型コロナウイルスの時代を念頭に置いて家族成員全てのウエルビーイングを調査する。3)国内における調査対象者を追加する(具体的には、現在の茨城県に加えインドネシア人技能実習生が働いている他地域を追加する。それによって、量的調査を試みる)、4)研究成果は新型コロナウイルス感染症との関連で早い時期に論文にまとめ学会誌等に投稿する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、今年度に予定していた海外旅費を使用しなかったためである。次年度の使用計画は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況に依るところが大きいが、海外調査が可能となればインドネシア現地調査のための旅費として使用する。海外調査が不可能な場合は、国内調査地への旅費およびwebアンケートのための調査費用に充当する。
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