2021 Fiscal Year Research-status Report
In West Africa where generations are changing after democratization, what kind of 'change' do media and youth hope for ?
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19K12514
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
田中 正隆 大谷大学, 社会学部, 准教授 (30398549)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ / ベナン / トーゴ / セネガル / デモクラシー / 若者 / 世代交代 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年代に民主化をすすめたアフリカ諸国では、いま、旧体制からの体制転換や政治アクターの世代交代が起こっている。グローバル化によって人やモノの流動が増え、マスメディアや携帯端末の普及など経済や社会環境が変動期にある。本研究では、民主化前後に生まれた二十~三十代の人々を「若者」とし、政権の世代交代にともなって、社会変革を求めて胎動する彼らの活動と今後の展望を明らかにする。
初年度には、民主化の進展で対照的なベナン、トーゴの都市部を中心に現地調査をおこなった。二年度以降の予定では、両国での調査において、地域社会のローカルメディアに焦点をあてて、その利用(聴取状況)や参加の違いを明らかにする計画だった。しかし、2019年末以来の新型コロナウイルス感染症の流行で、現地調査で経由するフランスやベナン、トーゴで入国が制限された。緊急事態はやがて緩和されたが、ヨーロッパで繰り返される変異株の出現、流行などによって、各国は海外からの渡航を制限しつづけている。二年、三年度の7月、8月に予定していた調査も、感染予防に割かれる作業や時間から断念せざるを得なかった。
二年度からインターネットを介した現地の情報収集や、初年度に構築したラポールを維持、展開するためのコンタクトに努めている。EメールやSNSが使用可能な人々に限定し、内容も近況やコロナ禍での情況についての情報収集にとどまった。二年度には単著『アフリカの聞き方、語り方』と論文「ベナンにおけるブードゥのメディア転回」を執筆し、公開した。三年度には国内、国外の国際学会発表にて研究の成果を問うたほか、上智大学の市民講座で「アフリカにおけるメディアとデモクラシー」(10月)を講演し、調査結果をより広い見地から整理して、一般への成果還元をおこなった。オンラインでの調査を模索しつつ、既存資料からの発信をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は民主化の進展で対照的なベナンとトーゴの都市部であるコトヌとロメ、そしてロコサ(ベナン)において現地調査を行なった。各地のメディアの視聴者参加番組と人々のメディア視聴や参加を調べ、メディアの友の会や市民団体の活動についても調べた。二年度はこの成果をふまえて、地域社会でのローカルメディアの利用や参加の違いを明らかにする予定だった。三年度には各国のローカル局が地域コミュニティや海外NGOと協力し、どのような住民間のネットワークをつくっているかを比較し、先の二国にくわえてセネガルでの情況を資料収集することを計画した。
しかし、2019年末以来の新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、現地調査を行なう上で経由するフランス、調査地のベナン、トーゴは海外からの入国者制限をおこない、現在までそれが続いている。その後の感染状況は緩和や急変を繰り返しているが、WHOは世界的なパンデミックと認め、各国が独自に対応している。二年、三年度の計画でも、複数の経由地や調査地を移動、往復することは、断念せざるを得なかった。
模索の段階で、初年度に構築したラポールの維持、継続や、インターネットを介した限定的な調査、情報収集へのシフトを余儀なくされている。だが、本研究にかかわる各国の大統領選挙をめぐる世論の動向、キャンペーンの様子、選挙法の改正をめぐる議論について、若者層がどうとらえているかについて、貴重な取材を行った。この進展が本年度の進捗の成果である。調査研究とともに成果公開をもう一つの柱として、2022年5月のIUAES 国際会議での報告のために、エントリーや発表内容の準備をすすめていた。だが、サンクトペテルブルクでの当該会議は、昨今のロシア-ウクライナ情勢により、3月中旬に急遽、中止となった。パンデミックにくわえ、政治情勢の変化にも研究活動を対応させるのに懸命なのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初準備の計画への可能な限りでの復帰を予定している。コロナ禍や国際情勢によってさらなる変更を余儀なくされることも、現地の状況を見て検討したい。
二年度、三年度の計画を後ろ倒ししつつも、現地調査を計画している。以前のラポールの再構築とともにコロナ期間とコロナ後の社会情勢の取材と理解を先決とし、その上で計画の実施を模索する。すなわち、初年次の成果をふまえて、ベナン、トーゴでのローカルメディアの利用や参加の違いを明らかにする。ローカル局は地域のコミュニティや海外NGOと協力している。これを基点とした地域住民ネットワークの現状を調査し、パンデミックや社会情勢の変化への市民の意見や相互扶助の実態を把握する。ベナン、トーゴ、旧宗主国フランスでの大統領選挙やその後の情勢を、若者層がどうとらえているかを取材する。これについて2022年7-9月期と、複数回での短期調査の実施も検討している。
また、成果公開として、2021年10月に開催され、リモートで参加したIUAES 国際会議(メキシコ) での研究交流も継続しており、2023年度から対面的な会議が全面復旧されようとしている。一見、非効率的だが、複数言語を用いる国際会議では、直接的な交流や複数のパネルを見学し、刺激を受けることは、知識とともに人的ネットワークの構築に重要である。今後はオンライン会議とのハイブリッドなど柔軟な形式も通常化してゆくが、これらへの積極的な参加から、情報発信および理論面での情報吸収、共有をしてゆく。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由とは、2019年末以来の新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、現地調査を行なう上で経由するフランスや渡航先のベナン、トーゴで出入国の制限が厳格化されたためである。WHOは世界的なパンデミックと認定し、各国は出入国や移動の制限と経済活動の賦活のバランスを模索するようになった。複数の経由地や調査地の移動、往復は、感染予防に割かれる作業や時間からも、きわめて困難となった。ゆえに旅費、消耗品費、謝金などの研究費を当初のように支出することはできなかった。
だが、「研究の推進方策」での記述に準じた計画をたてており、また、パンデミックや欧州での軍事衝突、物価の高騰という社会情勢の変化に対する人々の動向など、調査項目はより具体化している。状況を考慮して適切かつ効果的な研究費の支出と研究の遂行をする。調査計画としては、二年次からの計画を後ろ倒しし、現地調査を可能な範囲で実施する。以前のラポールの再構築とともにコロナ期間とコロナ後の社会情勢の取材と理解を先決とし、その上でメディアと若者の動向についての調査を実施する。当初の論点であるベナン、トーゴでのローカルメディアの利用や参加の違いを比較し、ローカル局を基点とした地域住民ネットワークの現状、現状に対しての若者の動向と交流を把握する。ここにおいて旅費、消耗品費、謝金などを当初計画にあわせて支出する。
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Research Products
(2 results)