2020 Fiscal Year Research-status Report
(不)可視の隣国:現代北朝鮮の表象文化・ジェンダー・文化政治学をめぐる基礎研究
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19K12517
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
李 恵慶 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20648737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 北朝鮮 / ジェンダー / 歴史認識 / 日本表象 / (国)母のイメージ / ナショナリティ― / ポストコロニアル |
Outline of Annual Research Achievements |
北朝鮮はこれまで〈他者〉をどう捉え、描き、新しい社会主義国としての自己像の創出・強化に結び付けてきたのか。そして理想的な自己表象・ジェンダーが国民統合装置としていかなる役割を担ってきたのか。また芸術・文化のプロパガンダ機能がテクストに自ずと書込まれたずれや余白によっていかに揺るがされ変容を迫られているのか。近年の北朝鮮の文化空間を取り巻く社会文化的な変化を視野に入れ、1980年代以降の表象文化・ジェンダー・文化の政治学をめぐる基礎研究を行うことが本研究の主な目的である。そしてこれまで主に政治・経済・思想を分析の中心軸としてきた北朝鮮研究を文化研究の立場から補完し、朝鮮半島地域研究の厚みと幅をもたらすことがもう一つの狙いである。 そのためにこれまで、①北朝鮮の表象文化史と自己成型の系譜、②自己/他者、ジェンダー、ナショナル・アイデンティティのあり方と変容、③北朝鮮と韓国のジェンダー・表象・文化政治学の比較、④東アジアにおける北朝鮮表象の比較分析、という4つの切り口から研究を進めてきた。なかでも今年度は特に②と③を中心にテクスト分析を行い、北朝鮮の現代文学や映画における「他者」表象とジェンダー表象が新しい社会主義国としての自己像をいかに創出・強化し、国民統合装置として働いているのか等を析出した。分析はまだ途中であるが、その一部をまとめて発表することができた。また本研究と隣接する分野の研究者らとオンラインでの自主研究会(国内)と研究打ち合わせ(海外)を行い、今後の研究へつなげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大とそれに伴った緊急事態宣言・まん延防止等重点措置により、国内および海外の出張ができなくなったことが主な原因である。なかでも1次資料の収集が主な目的である海外出張ができなくなったことで、分析テクストがほとんど入手できず、当初の研究計画に対してかなりの後れを取っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現在行っているテクスト分析を深化させまとめながら、1次・2次資料の調査・収集・整理を図り、研究の遅れを取り戻すように務める。とりわけテクスト分析においては、①北朝鮮の文化空間において他者やジェンダーがどのように描かれ、理想的な国としての自己像の創出・強化に結び付けられてきたのか、②それが国民統合装置としていかなる役割を担ってきたのか、③またテクストに書込まれたずれや余白、さらに映画共同制作など近年の文化空間における様々な変化が文化生産物のプロパガンダ機能をいかに揺るがし変容させているのか、という三つの切り口から分析を進め、1980年代以降の北朝鮮の新たな表象文化論に向けた理論的枠組みの構築を試みる。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症拡大により、予定していた出張(国内3回・海外2回)がすべて中止となり、分析テクスト(1次資料)を初めとして様々な資料・文献を収集することができなくなったため、旅費と物品費(資料購入費)をめぐって次年度使用額が生じることとなった。今後の状況にもよるが、出張に行けることになれば使用に大きな問題はないように思われる。しかしもし次年度も今年度と同様な状況が続くとすれば、資料収集の方法や研究の進め方を見直し、新たな方法を模索したいと考えている。
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