2022 Fiscal Year Research-status Report
(不)可視の隣国:現代北朝鮮の表象文化・ジェンダー・文化政治学をめぐる基礎研究
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19K12517
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
李 恵慶 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20648737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 北朝鮮映画 / 合作映画 / 怪獣 / 神話的な身体 / ナショナルな想像力 / 北朝鮮文学芸術論 / ジェンダー表象 / プルガサリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は近年の北朝鮮の文化空間を取り巻く社会文化的な変化を視野に入れ、1980年代以降の表象文化・ジェンダー・文化の政治学をめぐる基礎研究を行うことである。そしてこれまで主に政治・経済・思想を分析の中心軸としてきた北朝鮮研究を文化研究の立場から補完し、朝鮮半島地域研究の厚みと幅をもたらすことがもう一つの狙いである。具体的な研究項目は、①北朝鮮の表象文化史と自己成型の系譜、②自己/他者、ジェンダー、ナショナル・アイデンティティのあり方と変容、③北朝鮮と韓国のジェンダー・表象・文化政治学の比較、④東アジアにおける北朝鮮表象の比較分析、の4つである。 そのなか、今年度は特に②と③を中心に、北朝鮮の自己/他者、ジェンダー、ナショナル・アイデンティティのあり方と変容、そしてそれに基づいた文化政治に焦点を当てテクスト分析を行った。文学と映画を中心にポスター、デザイン、美術等、様々な文化生産物を研究対象として取り上げ、北朝鮮の政治・社会・文化・歴史的諸条項から大衆文化と自己イメージ・アイデンティティの構築における相互作用、およびそのプロセスを析出した。 現在は北朝鮮と韓国は互いを〈他者〉としてどう捉え、描き、自己成型してきたのか。そしてそこにどういった政治的無意識が働いているのか。その共通点と特異性を歴史の認識やジェンダー、ポストコロニアル批評、精神分析などから分析をおこなっている。 分析はまだ途中であるが、一部を学会にて報告しており、それを深めた論文を近くに公開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の拡大に伴った様々な制限が主な理由として挙げられる。とりわけ移動制限が長く続いたことにより、本研究遂行において不可欠な韓国出張ができず、1次資料が入手できなかったことが大きい。そのため、分析が滞り、当初の計画を大きく修正せざるをえなかった。そうしたことにより、現在までの進歩状況を「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
何よりも研究を円滑を進めるためには分析に必要な資料と文献、先行研究等を国内外で収集する必要がある。そのため、次年度には韓国への出張を2回計画している。長期休み期間を利用し、集中的に行う予定である。その傍ら、これまでの分析を深めながら、さらに研究範囲を広げていくとともに、その結果をまとめて広く公開する。。 またこれまで実施することができなかった対面による研究会を開き、関連分野の研究者と研究成果を共有しながら、新たな研究課題・共同研究へと繋げる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウィルス感染症の拡大により、海外への出張ができなかったからである。今年度は移動制限がなくなったため、当初の計画通り、資料取集及び研究発表などのための国内外の出張費として使用する予定である。
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