2019 Fiscal Year Research-status Report
Vertical Integration of Chilean Primary Industry
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19K12520
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
北野 浩一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 主任調査研究員 (00450479)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チリ / 一次産品産業 / 農業 / 経済発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界的な輸出市場において飛躍的な発展をとげたチリの一次産品産業について、垂直統合との関連を中心に研究することを課題とする。1年度目にあたる本年度は、特に農業分野について統計データを基にした研究を実施した。具体的には、チリの統計局と経済省が公表を始めた事業所ベースの経営に関する調査における個票を元に、5地点の事業所別パネルデータを構築した。これを用いて、企業間取引や企業グループへの帰属といった垂直統合を示す指標と、労働生産性との関連を計量的に分析した。垂直統合の程度は、生産主体の規模や人的資本蓄積のための投資水準とも相関が高く、これらを通じた生産性へ効果についても検討を加えた。 また、過去50年に及ぶ農業センサスをベースにした農地所有構造の分析もすすめた。これにより、チリの農地所有が1970年代の農地改革の前後で、個人の大規模農地所有が一旦国家に接収される形で解体し、その後株式会社など法人形態の所有を主とする現在の所有構造に変化してきたことを明らかにした。また、個別農地ベースの土地生産性についても計測し、規模の経済性がみられることを実証した。 これら研究は、ラテンアメリカ政経学会での口頭報告、および所属するアジア経済研究所の学術誌に投稿し、成果の普及を行った。学会では、「チリ一次産品産業の垂直統合と企業の生産性」と題する報告を行い、実証研究を中心に報告した。また、「チリ農業企業の労働生産性とその決定要因」と題する報告をアジア経済研究所の学術論文として投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要となる統計データ等は既に入手していたため、これまでの法人統計や農業センサスをもとにした統計解析は順調にすすめられた。また、農業分野の生産性に関する先行研究も、チリだけでなく、日本、米国など先進国や発展途上国を事例としたものも広くサーヴェイを行った。 2019年度は、年度後半に現地調査を予定していたが、チリにおける「社会危機」と呼ばれる市民運動の激化で夜間外出禁止令出されるなど治安が急速に悪化したたため、実施できなかった。なお、「社会危機」は本研究のテーマである民間企業成長を重視するチリの経済発展経路とも密接に関係することから、「チリの『社会危機』勃発と所得分配問題」と題する報告としてまとめ、アジア経済研究所の学術情報誌『ラテンアメリカ・レポート』にて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
チリの有力な輸出一次産品として、農業のほかに水産業、林業などがある。今後これらの産業について、先行研究の検討、漁業や林業の統計データ分析をすすめる。2020年に入り、チリでも新型コロナウイルスの感染拡大の問題があり、収束の時期はまだ明らかではない。今年度中に現地調査が可能な状況になっていれば、特に土地や生産手段の所有制度状況について、現地での調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度内にチリにおいて現地調査を実施する予定であったが、反政府社会運動の激化のために夜間外出禁止令が出るなど社会情勢が急速に悪化したため、渡航が困難となった。そのために、現地調査に予定してた経費の支出は行っていない。 次年度(2020年度)も、新型コロナウイルス問題で渡航が難しくなっているが、今後現地調査が可能な状況になれば、当初の計画より調査期間を延長するなどして対応したいと考えている。
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