2021 Fiscal Year Research-status Report
Vertical Integration of Chilean Primary Industry
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19K12520
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
北野 浩一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 主任調査研究員 (00450479)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チリ / 林業 / 紙パルプ業 / 垂直統合 / 輸出志向工業化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
チリの林業部門に関する垂直統合の状況と効果について、実証研究をおこなった。林業部門の主な輸出産品は、木材、木材製品、および紙の原料となるパルプやその素材の木質チップと多岐に及ぶ。林業部門の輸出産業としての発達は比較的遅く1980年代からであり、チリの輸出志向工業化政策が成功した部門の一つと言える。本研究では、チリの林産業部門が製紙業の成長を軸に、その原料調達のために企業が中南部の土地を取得し植林地を拡大していった事例を分析した。 製紙業は設備投資コストが大きく、典型的な装置産業である。そのため稼働率を高く保つ必要があり、安定した原料の供給源を持つことは競争力の確保につながる。天然林の利用に制限が強まるなか、木材資源を確保するためには植林が不可欠であり、外来種である針葉樹のラジアタ松と広葉樹のユーカリを大規模に植林してきた。しかし、両樹種は成長が早いといっても利用可能になるまでには10年を超える長期的な視野での投資が必要になる。そのため、生産に必要な土地者と木材生産者の間には契約理論でいう典型的な「ホールドアップ」問題が起きやすいが、チリの場合は、企業による土地買収の制約が低く、大規模な垂直統合が可能になった。本研究では、産業・企業データと事象分析により実証的に示している。 通常、企業による大規模な垂直統合は、産業の寡占状況を生みやすく、厚生面で負の効果も懸念される。一方で、2010年に発生した大規模地震の際には、大企業がグループとして災害復旧に取り組み、比較的規模の小さい木材加工場であっても保険による設備被害の補償で速やかな事業再開を可能にしている。また関連事業所で働く労働者だけでなく、一般の被災者向け住宅を建設するなど、産業立地が集積している地域全体の復旧にも取り組むなど、広範なステークホルダーへの支援がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
統計データ等は企業データを最新のものにし、時系列での比較が可能なデータベースの構築を行った。農業センサスは新型コロナ感染症の影響により現地の調査、および報告が当初予定よりも遅れているが、一部公開が始まり今年度の林業部門の研究でも用いられた。 農業分野については、林業部門の発展について、土地の所有状況、企業の財務報告から経営戦略を抽出するなどして実施した。 2021年度も、当初はチリ中南部において一次産品産業に関する現地調査を予定していたが、新型コロナの影響で海外渡航が不可能となり、現地調査は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、2度の現地調査を準備していたが、過去2年半にわたる渡航制限のために実施できていない。今年度前半までは、引き続き現地調査の可能性を探りたい。 それと並行して、これまで作成してきたデータベースや、本研究計画の成果をとりまとめ、チリの一次産品産業の垂直統合に関する俯瞰的な分析を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度は、当初予定していた現地調査が不可能となりそのための経費が残額となった。 2021年度も、引き続き出張旅費を計上するが、並行してデータ分析や日本での情報収集のために必要な諸経費の支出を見込んでいる。
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