2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on Chinese ethnic problems during anti-Japanese war period based on analysis of Wu Zhongxin's diary
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19K12521
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 稔弘 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (10333907)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国近現代史 / 民族問題 / 呉忠信 / 蒙藏委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は國史館所蔵の『呉忠信日記』の閲覧と入手済みの『入藏日記』および『主新日記』の閲読ならびにデータベース作成を進めた。 前者については2019年9月に約10日間の日程での調査を行った。訪問先としては國史館に加えて中國國民黨黨史委員会黨史館を含め、黨史館においてデジタルデータ形式で公開している『呉忠信日記』の状況についての確認を行い、資料閲覧の便宜においては國史館にやや劣るものの、國史館閉館時の代替手段としては十分な利用価値を持つことを確認した。國史館における『呉忠信日記』の閲覧については、今年度は新疆に関する部分の閲覧を予定していたが、新疆省主席就任期を扱った『主新日記』と重複する部分の比較検証は後に回し、まずはその前段階である1942年から1944年にかけての日記を閲覧し、書写による収集を行った。帰国後に筆者収集した資料をワープロ入力し、表計算ソフトによるデータベース化を行った。これにより収集した資料のキーワード検索を可能にするとともに、今後の調査で収集した資料を追加することでデータベースの充実を図ることとした。 また入手済みの『入藏日記』ならびに『主新日記』についても、記載内容をワープロで入力し表計算ソフトによりデータベース化することで『呉忠信日記』の記載内容との比較検証を容易にすべく作業を並行して進めた。 今年度の資料収集の結果、チベット訪問後の呉忠信が中藏関係の悪化と軍事的緊張により蒙藏行政の行き詰まりを感じ、蒋介石に幾度か辞意を伝えていたこと、状況打開のために西北地域への訪問に参与し、そこで甘粛・青海両省の政治・軍事面での指導的人物との交流を深め、こうした経緯がその後の新疆省主席就任受諾を促す背景となっていたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の台湾での文献調査は2019年9月と2020年3月の2回に分けて実施することを予定していたが、後者については新型コロナウイルスの感染拡大に伴う台湾側の渡航条件厳格化と隔離措置の実施ならびに台湾行き航空便の運航停止に伴い実施を見送らざるを得なくなった。そのため3月の調査で予定していた『主新日記』との比較検証については、現地調査の再開を待たねばならなくなり、当面の措置として9月の台湾調査で筆写した『呉忠信日記』ならびに『入藏日記』や『主新日記』など収集済みの文献資料のワープロ入力ならびに表計算ソフトでのデータベース化を中心とした整理・分析を進めるという形をとることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾での文献調査については、感染収束に伴う日台間の渡航制限が緩和・解除され次第、2019年度未実施分も併せて実施する。当初の計画では初年度に呉忠信の新疆省主席就任期、第2年度に対チベット交渉期を中心に調査を進めることとしていたが、今年度9月の調査実績を基に両者を分けずに同時並行で資料の収集を行う。また現地調査の再開をにらみ、それまでに『入藏日記』および『主新日記』のデータベース化を完成に近づけ、『呉忠信日記』との比較検証作業を早急かつ円滑に行えるように作業を進める。これらの作業により第2年度終了時には研究成果の発表・公開の目処がつくようにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として計上した助成金については、2020年3月に実施を計画していた台湾での文献調査の旅費として使用を予定していたものである。これについては新型コロナウイルスの感染拡大状況を受けた日本ならびに台湾の渡航制限ならびに入境時検疫の強化により年度内の実施が困難となった。当該調査の実施日が年度末に近かったことに加え、日本国内においても防疫上の理由から研究機関や大学付属図書館の入室・閲覧制限が強化されたため、別用途での使用も困難であると判断し、次年度において現地調査の再開が可能になった際に改めて旅費として使用することとした。
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