2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on Chinese ethnic problems during anti-Japanese war period based on analysis of Wu Zhongxin's diary
Project/Area Number |
19K12521
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 稔弘 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (10333907)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国近現代史 / 民族問題 / 呉忠信 / 蒙藏委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は年度当初より国内外で新型コロナ感染対策が広範に展開された結果、海外渡航のみならず県境を越えての移動が困難な状況の下で行うこととなり、年度を通じて本研究課題の主たる活動である台湾・國史館への訪問および当該機関所蔵の『呉忠信日記』の閲覧・筆写による資料収集を実施することができなかった。そのため本年度の研究活動はこれまでに収集した資料を整理・分析して海外調査の再開に備える方針で進めることになった。まずは昨年度来進めている筆写収集済みの『呉忠信日記』の辺疆政策関連記述の表計算ソフトによるデータベース化作業を完了し、今後の収集作業による情報追加ならびにキーワード検索に対応できるようにした。また『入藏日記』と『主新日記』については昨年度の時点で大陸で出版された活字(簡体字)版(ただし『主新日記』は抄訳)および原本の影印版を入手しており、活字版をもとにしたデータベース化作業を継続的に進め、影印版との比較で簡体字と繁体字の異同、および活字版編纂における記述改変の有無を検証した。『呉忠信日記』の既調査分は『入藏日記』『主新日記』の記述と重複する部分をカバーし切れていないために比較検証に着手するまでには至っていないが、呉忠信のチベット訪問から新疆省主席辞任に至るまでの時期において、彼が中央政府官僚の辺疆情勢への危機感の欠如に対して抱いた焦燥感、そして蒙藏委員会をより包括的な民族政策執行機関に改革しようという意欲が辺疆民族問題の外交・軍事問題との関連性増大に伴い減退してゆく過程、またその背景に呉忠信が軍人から政治家への転身に際して決意した以降は軍事に携わらないという信条が少なからず影響している点が断片的ながら把握することができた。これらの作業により、次年度の研究活動展開の方針ならびにその見通しをある程度定めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は台湾の國史館を訪問して『呉忠信日記』の閲覧・筆写を行うことで資料収集を行うことを前提としているが、2020年度は新型コロナ感染対策により台湾への渡航が著しく困難である状況が続いており、研究活動それまでに収集した資料の整理・分析が中心となり、当初計画していた初期成果の発表については『呉忠信日記』からの筆写収集状況が充分でないことに鑑み見送ることとなった。ただし今年度末より台湾において『呉忠信日記』の活字版が順次刊行を開始しており、台湾への訪問調査の再開と並行して当該資料を入手することで今年度の進捗の遅れを次年度にはある程度取り戻すことが可能な状況であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は台湾への渡航が可能になり次第、國史館での資料収集を再開する。他方で昨年度末頃から台湾の民國歴史文化學社より『呉忠信日記』の順次刊行が開始され、出版社の情報から本研究課題の研究期間内に本研究課題が対象とする時期のかなりの部分が刊行される見込みであることから、海外調査再開までの措置として既刊分を早急に購入するとともに続刊についても逐次入手し、これまでの調査で未収集であった部分を当面はこの活字版で補うこととし、また國史館訪問が実現した際には原本と対照してその資料性に問題が無いかどうかを確認する。そして『入藏日記』および『主新日記』と『呉忠信日記』の記述内容、および関連する公文書資料との比較検証を行った上で、成果のとりまとめに着手し、年度内の発表を目指すこととする。
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Causes of Carryover |
本研究課題の所要経費の大半を占めるのが資料収集調査および成果発表のための海外渡航ならびに国内移動の旅費であるが、2020年度は新型コロナ感染対策のため海外渡航のみならず県外への移動についても制限されたために調査を実施できず、また物品費の支出もあまり多くなかったことから次年度使用額が生じることとなった。今後の使用計画として、新型コロナ感染状況の収束に伴う海外調査再開の可能性を模索しつつ、台湾で順次刊行が始まった『呉忠信日記』活字版の購入を優先的に行うとともに、関連する書籍資料の購入を行い、年度後半の段階で調査のための海外渡航の実施および成果発表等のための国内移動の可能性を見極めた上で物品費と旅費の執行方針を最終的に判断する。
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