2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Chinese ethnic problems during anti-Japanese war period based on analysis of Wu Zhongxin's diary
Project/Area Number |
19K12521
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 稔弘 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (10333907)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国 / 近現代史 / 辺疆 / 民族問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は本研究課題の最終年度であるが、新型コロナ感染拡大の影響による渡航制限により、本研究課題の主たる調査地である台湾の國史館を訪問し『呉忠信日記』の閲覧及び筆写による収集を再開することが困難な状況は改善しなかった。ただし台湾の出版社が刊行開始した『呉忠信日記』活字版は研究期間内に全巻入手できた。活字化に伴う原本との異同の有無については、これまでの現地文献調査で収集したデータとの比較において、書式面での若干の異同を除いて記述に相違はなく、内容の信頼性を確認することができた。『呉忠信日記』活字版の入手により現地での文献収集の不足分を相当程度補い、『呉忠信日記』の全容把握が可能となり、これをもとにデータベース化作業を進めることで、本研究課題で計画していた『呉忠信日記』の辺疆民族問題に関する内容の確認をほぼ終えることができた。この作業を通じて、呉忠信のチベットや新疆といった中国辺疆における活動の具体的状況、彼の辺疆民族問題に対する理念や問題意識の変遷とその背景、蒋介石をはじめとする民国期の重要政治人物との交流・接触、および彼らとの間で展開する辺疆民族政策に関する対話とその相互に与えた影響といった事象を把握することができた。また呉忠信の著した『入藏日記』と『主新日記』、さらには蒋介石その他民国期政府要人の日記や回顧録、そして國史館が公開している民国期公文書、さらには中国大陸で刊行されている民国期資料との比較検証により、『呉忠信日記』中の記述の検証を行うとともに、これら諸資料の裏付けや背景理解を一層進めることができた。これらの作業を通じて、20世紀前半の中国辺疆民族地域における民族政策の展開を考察する上で重要な知見を得ることができた。研究期間内に得た知見については、研究期間内に具体的な形で成果発表を行うことができなかったが、論文の形で早急に公開できるよう準備を進めている。
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