2021 Fiscal Year Research-status Report
The Role of Spirits and Women's Diseases on the East African Coast
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19K12525
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤井 千晶 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 特別研究員(RPD) (80722058)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東アフリカ沿岸部 / ザンジバル / 民衆のイスラーム / 精霊 / 女性の病 / タリーカ |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目である本年度は、前年度と同様に新型コロナウイルス感染症の影響により、ザンジバルでの調査が実施できなかった。そのため、やむを得ず国内においてこれまでの研究内容の分析と、先行研究の整理を行った。 前年度までの研究の整理・分析の成果としては、論文“The Thought of Coexistence on Tariqas on the East African Coast”を発表した。本論文ではカーディリー教団とアラウィー教団に焦点を当て、19世紀後半以降、タリーカがイスラームの儀礼や教育を通して民衆にイスラームを浸透させたことを示した。そして、タリーカがコミュニティ内の様々なバックグラウンドを持った人々が共生する基礎を築いたことを明らかにした。また、それまで社会的に表舞台で活動することが少なかった女性たちもタリーカに加入することで女性の宗教的コミュニティを形成し、活躍したことを示した。 一般向けに行ったオンライン講演会「今日のスーフィズム:神秘主義の諸相を知る」(Sophia Open Research Weeks 2021)では、「社会に息づくスーフィズム:東アフリカ沿岸部の事例から」というタイトルで、東アフリカのタリーカの活動が、いかに人々の社会生活に根ざしているかを示した。本講演会においても、女性たちがタリーカの活動に積極的に参加していることを示した。 その他、2020年のアフリカ史の研究動向をまとめた「回顧と展望―アフリカ」では、近年発表された多くのアフリカ史研究が、アフリカ大陸を越えたグローバルな視野を持ってなされていることを示した。「《書評》石原美奈子(編)『愛と共生のイスラーム-現代エチオピアのスーフィズムと聖者崇拝』春風社、2021年、550頁」を執筆したこともまた、イスラームの共生の知恵を考察する上で有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗状況がやや遅れた理由は、大きく2つある。 第1に、昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染症の影響によって、ザンジバルでの調査ができなかったことである。毎年、現地調査を行ってその内容を分析するという研究計画を立てているため、本年度は新たな研究結果を得ることができず、研究にも遅れが生じた。 第2に、新型コロナウィルス感染症の影響で、子どもが通う保育園からの登園自粛要請や小学校の休校、さらに家族全員が新型コロナウィルスに感染したことによる療養等が重なった。また、第2子(2歳)が1ヶ月に一度は発熱していたため、その度に通院と複数日の欠席が発生した。 以上のような理由から、本年度は当初の研究を予定通り進めることが困難であったため、進捗状況はやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、新型コロナウイルス感染症が収束し、安全に海外渡航をすることが可能となれば、ザンジバルに渡航し、現地調査を実施する。そしてこれまで延期していた調査内容を速やかに実施し、できる限り遅れを取り戻すことができるように尽力する。そのためにも、国内では先行研究の精査やインタビュー項目の作成をしたり、現地の調査協力者と連絡を取り合い、調査の事前準備を進める。 また、本年度に研究した内容も、次年度のアフリカ学会学術大会で発表したり、論文にまとめて成果を公表する予定である。その際のフィードバックや査読者のコメントを参考にして適宜研究計画を再調整し、最終年度に向けて研究内容をまとめていく。
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Causes of Carryover |
本年度、ほとんど支出がなかった理由は、海外調査が実施できなかったためである。また、学術大会や国際ワークショップ、国内研究会が全てオンラインで実施されたため、旅費の支出がなかった。 次年度への繰り越し金は、主に海外調査を行うための旅費に計上する。また、2年間見送った海外調査の遅れを取り戻すため、海外協力者への協力依頼を増やす。そのため、人件費を当初の計画よりも多く支出し、できる限り多くの参与観察とインタビューを実施する。 国内での研究では、資料購入に加え、発表のための国内旅費や英語論文執筆のための英文校閲費を支出し、積極的に海外調査の成果公開を行う。
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Research Products
(3 results)