2021 Fiscal Year Research-status Report
現代アラビア語の標準化と地域差の生成―湾岸と西方アラブ地域の比較・相関研究
| Project/Area Number |
19K12526
|
|---|
| Research Institution | Kyoto University |
|---|
Principal Investigator |
竹田 敏之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任准教授 (40588894)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
| Keywords | マグリブ / アラブ詩 / 韻律学 / アルード / クルアーン読誦学 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、実施計画にそって次の３項目にわたる研究活動を行った（新型コロナウイルスの感染拡大にともない臨地調査は次年度へ延期）。
１．本年度の活動として、①アラブ詩と韻律学（アルード学）の史的展開とその教育に関する現在の課題、②現代アラビア語における「標準」とクルアーン読誦流派との関係、③アラビア語学における類推（キヤース）の応用と現代語彙の造語法、という３課題について学会および研究会で研究成果を発表した。また、現代アラビア語の実用表現と公用語としての地位に関して、辞書の項目を執筆し刊行した。
２．これまでに収集した新聞・雑誌および辞書類を分析対象とし、正則アラビア語のマグリブ用法（マグリブ諸国に特有な「書き言葉」としての生活語彙および専門用語）に関するデータ入力を進めた。今年度は、モロッコと湾岸・エジプトにおける現代法律用語の地域差について詳細な検討を行った。マグリブ用法か否かの判断については、前年度に続き、シャルジャ文化情報庁のムハンマド・アミーン・サムラーリー氏（モーリタニア）と、アフバール・アルヤウム紙のファーティマ・アブー・ナージー氏（モロッコ）による知見の提供と協力を得た。
３．サカーファ出版社（モロッコ・カサブランカ）のムハンマド・ナブガ氏をカウンターパートとして、マグリブ諸国で出版されたアラビア語韻律学に関する文献および教科書類の収集を進めた。特に同地域およびモーリタニアの伝統的教育では、「ハズラジーヤ」の名で知られる韻文要綱の暗記と学習が盛んであり、同氏からは、その注釈書の生産と出版状況に関する情報の提供を得た。こうして得た資料や知見を活かし、アラブ詩と韻律学の基礎事項に関する草稿を作成した。より具体的には、音節の種類、韻律解析の方法、16律式に関する各章（タウィール調、バスィート調、カーミル調、ハフィーフ調、ラマル調、ハザジュ調）を執筆した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代アラビア語の地域差に関する語彙の抽出作業およびデータ入力と、アラビア語教科書の各章の執筆が順調に進み、本研究課題の総括と成果発信への道筋が立った。また、学会や研究会を通じた研究成果の発表についても、計画どおりに進展している。
|
| Strategy for Future Research Activity |
次年度では、以下の３点を中心に研究を遂行する。
１．アラブ詩と韻律学について執筆した各章をまとめ、教科書（学習用テキスト）としての編集作業を進める。
２．湾岸諸国で開催される国際ブックフェアを対象に、西方アラブ地域からの出版社と書籍の流通に関する調査を実施する。
３．正則アラビア語の地域差に関する用例データを整理し、湾岸・エジプトとマグリブ諸国（特にモロッコ）における語彙使用の相違（類似した事例としては、イギリス英語とアメリカ英語の比較）をテーマとした単語集を編纂する。その際に、①専門用語、②生活語彙、③外来語、④新語について検討を行う。これらの分析・検証の結果を、「西方アラブ地域の語彙表現」「現代アラビア語の地域差」の章としてまとめ、中東地域研究者向けのアラビア語教科書に取り入れる。さらに同教科書に対応した教師用ガイドとして、本研究で抽出した語彙や用例を取り入れた文法レファレンスを刊行する。
|
| Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大にともない、予定していた臨地調査が延期となったために生じた。同調査は対象地域および日本の状況が改善した段階であらためて実施する予定であり、今年度からの次年度使用額はそのための旅費として使用する。
|
Research Products
(5 results)
