2021 Fiscal Year Research-status Report
Socio-cultural interaction in the U.S.-Mexico border region including the Pacific Ocean and the Gulf of Mexico
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19K12531
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
水谷 裕佳 上智大学, グローバル教育センター, 准教授 (90568453)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国境 / 先住民族 / 米国 / ハワイ / メキシコ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響が本研究にも及び、申請時に予定されていた現地調査を行うことはできなかった。一方で、オンラインで開催された講演や、国内での文献調査および論文執筆を通じて、本計画の目的に沿った研究活動を実施した。 11月には、上智大学イベロアメリカ研究所および上智大学アメリカ・カナダ研究所によってオンラインで開催されたシンポジウム「つながる東アジアと米州―新たな『太平洋世界』は形成されるのか―」において、「人の移動:中南米から北米へ」という講演を行った。講演の中では、本研究を通じて行ってきた文献調査等の成果を取り上げた。米国メキシコ国境を超えた人の移動は、メキシコから米国への人の流れとして捉えられることが未だに多い。しかし実際には、中南米を含む世界各地からの移民、難民が、メキシコを経由して米国を目指すこと、そしてハワイを含む太平洋地域における動きと米国メキシコ国境地域の状況には、先住民族の社会活動などを通じたつながりが見出せることを、講演の中で指摘した。 また、2021年度は、英語での論文執筆活動に取り組んだ。現在その1つは査読付き学術雑誌に採択され、校正を経て、本申請書作成時の2022年4月においては原稿が印刷所に入稿された状態である。出版は2022年度に入ってからとなるが、本研究にまつわる文献調査から得られた知見を用いて、新型コロナウイルス感染症パンデミック以前の現地調査で得られた情報を考察することにより、米国メキシコ国境地域の社会や文化について論じることができた。 昨年度の引き続き、研究に関連する文献調査も実施した。海外渡航がままならない時期であるからこそ、これまで目を向けなかった分野の文献購読にも取り組む時間が生じ、次年度以降の調査や研究に有益な資料を見つけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績の欄にも記した通り、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、本研究の進行は遅れている。 年度の途中には、一旦日本および米国の感染者が減少に向かった時期もあった。特に本研究の具体的な調査地の1つであるハワイについては、日本からの訪問者に対する規制緩和の可能性が繰り返し報道されたため、状況によっては現地調査が実施できるのではないか、と感じた時期もあった。しかし、渡航に関する規則や感染状況は変化を続け、パンデミックの収束や渡航規制の急速な緩和には至らなかった。2022年3月1日には、米国全土と日本の間を移動するにあたっても、帰国後の自宅待機期間が不要となるなど、大幅に帰省が緩和された。ただし、すでに年度末であったため、年度中に現地調査実施にまつわる手配を終えることは難しかった。さらに、現地での観光客の受け入れは再開したとしても、研究に関する資料が図書館に収蔵されたハワイ大学マノア校においては、新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的としたキャンパス内の規制は撤廃されておらず、現地の人々の心情を考慮すると非営利団体等の訪問や対面での聞き取り調査を実施するにもまだ時期が早すぎた。米国本土やメキシコにおいても同様もしくはさらに厳しい状況であったため、現地調査の実施、および現地調査によって得られた資料に基づいた論文の執筆は難しかった。 本報告書を作成中の2022年4月半ばまでは、海外との往来の状況や現地の図書館の利用状況などがまた変化したため、2022年度中の現地調査の実施について検討を進めている。研究期間が残り少なくなってきたものの、少しでも計画が進ように努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上の欄で既に述べた通り、2022年度に新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる渡航制限が緩和もしくは撤廃されるなど、世界的な人の動きが活発になるようであれば、資料収集のための現地調査を実施する予定である。ただしその場合にも、具体的な訪問先となる図書館、資料館、博物館、非営利団体、先住民トライブ政府等の方針や、現地の人々の心情などに配慮し、現地の状況に関する十分な情報収集を行った上で渡航の是非を検討する。 加えて、2021年度に引き続き、本研究の目的に沿った内容の学術論文を執筆し、査読付き学術雑誌に投稿する。さらに、研究者以外の人々も読むことのできる日本語の書籍として研究成果の一部を出版することも検討している。口頭発表に関しては、国内外の学会や研究会に加えて、オンラインで開催される講演会の発表の機会を探すこととする。 また、新型コロナウイルス感染症の状況や国際情勢の変化によって、2022年度にも再度海外への渡航が難しくなる時期が生じる可能性も想定し、引き続き文献調査にも取り組む。本研究を申請した時点においては、海外での現地調査で得られた情報に補足する形で文献調査を組み合わせることを想定していたが、仮に文献調査による成果が中心的なものになってしまったとしても、調査結果を出版物や口頭発表の形で発信できるよう、計画を柔軟に変更しながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、海外渡航を伴う現地調査が2021年度も実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度以降に実施する海外での現地調査に利用する予定である。
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