2019 Fiscal Year Research-status Report
ケニア・サンブル社会におけるジェンダー役割の変容と女性自助グループの可能性
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19K12533
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中村 香子 東洋大学, 国際学部, 准教授 (60467420)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ女性の地位 / 女性自助グループ / テーブルバンキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一夫多妻の家父長制のもとで性別と年齢に基づく徹底した分業体制によって牧畜業を行ってきた、いわば「ジェンダー不平等」を社会・文化の構造に強固に埋め込んできた「長老制社会」であるケニアの牧畜民サンブルの社会を事例に「女性の開発」や「ジェンダー平等」を目指す動きがどのように展開されているのかを明らかにすることを目的としている。 ケニアでは、2015年に自助グループに関する法律が整備され、現在、サンブルにおいても女性たちが主体的に女性自助グループを組織し、活動が活発化している。グループの活動にはさまざまな成功事例・失敗事例があるが、その動向に対して人々は、グループに参加していない男女を含めて、つよい関心を抱いている。これまでの現地調査によって以下のことが明らかになった。すなわち、自助グループは、「議長」「書記」「会計」の3役をおき、多くの場合、15~20名のメンバーで構成されている。正式に政府に登録すれば、グループ名でメンバー共同の銀行口座をもつことが可能となるし、政府やNGOなどから活動支援を受けられる可能性もあるため、ほとんどのグループは登録している。そして、グループ活動として広く行われているのは「テーブル・バンキング」とよばれている融資である。これは、メンバーが定期的に集まって全員が決まった金額を出し合い、毎回借り入れを希望するメンバーの誰かひとりに融資するもので、多くの女性は小規模ビジネスの開業資金としてこれを活用している。テーブル・バンキングのほかにも、共同菜園をもち、その収穫を販売して売り上げを分配するグループや、ビーズ製の装身具を製作して観光客などに販売するグループ、開発支援組織から共有財産としてヤギをもらい受け、それを「預金」として管理しているグループもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年3月に、国内(北海道・阿寒)において、おもに、アフリカの開発に関して調査研究をしている研究者と意見交換をしながら、観光と女性の開発に関する現地調査を実施する予定であったが、新型コロナの感染拡大の影響を受け、中止を余儀なくされた。これに代わって、これまで集積した現地調査によるデータの分析と文献研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査により、自助グループに現在所属している、あるいは、過去に所属した経験のある女性に対して対面インタビューを実施する。そのうえで、①夫の年齢組(世代)、②女性と夫の所属クラン、③両者の学校教育レベル、④両者の宗教、⑤両者の開発プロジェクトへの関与経験、⑥居住地域、⑦世帯の生業の複合状態、③配偶者選択のプロセスと結婚の形態(許嫁婚(強制婚)・連れ去り婚・恋愛結婚など)を聞き取る。このデータに基づき、自助グループには未婚の母や未亡人が多く含まれているのか、メンバーの教育レベルはどうか、グループの役職(議長や書記など)を務めて活動をけん引している人びとの教育レベルや開発プロジェクトへの関与の経験は活動の成否に関係するか、メンバーの夫はグループ活動や小規模ビジネスに対して理解を示しているのかなど、メンバーの属性とグループ活動の関連性を分析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの感染拡大により、現地調査の一部が予定どおり実行できなかった。2020年度に状況が改善ししだい、この分の調査をおこなう。
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Research Products
(3 results)