2021 Fiscal Year Research-status Report
ケニア・サンブル社会におけるジェンダー役割の変容と女性自助グループの可能性
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19K12533
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中村 香子 東洋大学, 国際学部, 准教授 (60467420)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 家父長制 / 一夫多妻 / マイクロビジネス / ビーズ工芸 / みやげもの / コロナと観光収益 / 女性の教育 / 高学歴女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一夫多妻の家父長制のもとで性別と年齢に基づく徹底した分業体制によって牧畜業を行い、「年齢体系(age system)」とよばれるシステムによって、政治・経済・宗教のあらゆる権限を年長男性に集中させてきたケニアの牧畜民サンブルの社会を対象として、ジェンダー役割の変化の動態を明らかにする目的で実施している。この動態の解明には、女性への教育普及や職業選択に関する調査とともに、比較的学歴が低い女性、あるいは、学校に通った経験をもたない女性たちが組織して活動している「女性グループ」に着目する必要がある。 これまでの調査で現地に存在している女性グループのおおまかな洗い出しは終えているが、2021年度も2020年度に引き続き、コロナの影響で現地調査の実施が見送られた。このためそれぞれのグループの具体的な活動を追えていない。コロナの影響がいつまで継続するかがいよいよ不透明なため、今後は渡航のめどがたつまでオンラインによる調査を実施してデータ収集をして研究をすすめたいと考え、2021年度はその準備のための調査をおこなった。 電話での会話で、調査地のコロナの影響は、とくに観光業に依存している女性グループのあいだで甚大であることがわかったが、それだけではなく、2021年半ばから、ケニアの中北部一帯が大干ばつに見舞われており、どの世帯においても家畜群が急激に縮小しているとのことだった。家畜の相場は急落する一方で、トウモロコシ粉をはじめとする生活物資の価格が高騰するなか、男性は生き残りをかけて家畜を守り、女性たちは日々の食糧の確保に追われているとのことである。こうしたかつてない困難のなか、女性たちはグループの組織力を強化し、できることを模索しているとのことであった。2022年度はこうした活動の詳細をオンラインによるインタビューで明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現地調査によるデータ収集ができていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、オンラインによるインタビューの実現に向けた準備を整えた。オンラインによるインタビューはスマートフォンとデータ通信費用、謝金を現地にとどけたり、機器の操作などを支援してくれる仲介者が必須となるが、現地の研究支援を実施する会社を探し、調査地に土地勘のある支援者を紹介いただくことができた。今後は、スマートフォンと通信アプリを利用して、オンラインによるインタビューを実現し、できる範囲での情報収集に努めていく。
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Causes of Carryover |
コロナの影響の継続により、現地調査のための渡航が今年度もかなわず、次年度使用額が生じた。今後は、リモートによる聞き取り調査のめどがたったため、積極的に調査を実施して謝金として執行していくとともに、現地調査の可能性もさぐっていく。
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[Book] アイヌのビーズ2022
Author(s)
池谷和信(編著)中村香子
Total Pages
288(担当範囲: 260-271)
Publisher
平凡社
ISBN
978-4-582-83896-1
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