2022 Fiscal Year Research-status Report
ケニア・サンブル社会におけるジェンダー役割の変容と女性自助グループの可能性
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19K12533
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中村 香子 東洋大学, 国際学部, 教授 (60467420)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家父長制 / 一夫多妻 / シングルマザー / テーブルバンキング / 牧畜民の干ばつ対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一夫多妻の家父長制のもとで性別と年齢に基づく徹底した分業体制によって牧畜業を行い、「年齢体系(age system)」とよばれるシステムによって、政治・経済・宗教のあらゆる権限を年長男性に集中させてきたケニアの牧畜民サンブルの社会を対象として、ジェンダー役割の変化の動態を明らかにする目的で実施している。この動態の解明には、女性への教育普及や職業選択に関する調査とともに、比較的学歴が低い女性、あるいは、学校に通った経験をもたない女性たちが組織して活動している「女性グループ」に着目する必要がある。 2020年度から2021年度は、コロナの影響で現地調査の実施が見送られた。このため女性グループの具体的な活動を追えていなかった。その間はオンラインによる調査を実施して調査地で活動している女性グループのおおまかなデータを収集をして研究をすすめた。2022年度は、9月と3月に現地調査が可能になり、具体的な活動を見聞し、また、活動を実施している人びとへのインタビューを実施することができた。2021~2022年度は、調査地は過去50年に経験したことのない厳しい干ばつに見舞われており、多くの人びとの生活基盤である家畜群が著しく縮小していた。加えて、ウクライナ危機による物価の上昇によって、人びとの生活は困窮の一途をたどっていた。このようななか、地道に小規模な活動を重ねて、それぞれの資金を出し合って貯蓄(テーブルバンキング)することによって、たとえば、病院の費用などの緊急の出費への対応が可能となった事例が聞かれた。干ばつ前には女性グループの活動に関心を示していなかった男性が女性グループの活動を肯定的に評価し始めていた。中には実際に加入する男性もあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査によるデータ収集を研究の基盤としている本研究課題において、2020-2021年度に現地調査を実施できなかったことは大きな遅れに結びついた。しかし2022年度は、その間に実施したオンラインによるデータ収集と、それをフォローする形での現地調査、さらに、現地調査と現地調査の間にもオンラインによる継続調査も実施することができた。このため、遅れをある程度取り返すことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に研究期間を延長し、オンラインによる調査を継続する。女性グループの定例会議の参加もオンラインで実施し、継続的にデータを収集するほか、9月と2-3月に現地調査をおこない、最終成果に繋げる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響でフィールドワークが延期されてきたため、次年度使用額が生じた。2023年度には、現地渡航のフィールドワークと、オンラインによるフィールドワークを計画的に実施していく。
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