2023 Fiscal Year Research-status Report
ケニア・サンブル社会におけるジェンダー役割の変容と女性自助グループの可能性
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19K12533
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中村 香子 東洋大学, 国際学部, 教授 (60467420)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 家父長制 / 一夫多妻 / テーブルバンキング / 牧畜民の干ばつ対応 / シングルマザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一夫多妻の家父長制のもとで性別と年齢に基づく徹底した分業体制によって牧畜業を行い、「年齢体系(age system)」とよばれるシステムによって、政治・経済・宗教のあらゆる権限を年長男性に集中させてきたケニアの牧畜民サンブルの社会を対象として、ジェンダー役割の変化の動態を明らかにする目的で実施している。本研究では、この動態の解明のために、女性への教育普及や職業選択に関する調査とともに、比較的学歴が低い女性、あるいは、学校に通った経験をもたない女性たちが組織して活動している「女性グループ」に着目することを特徴としている。2020年度から2021年度は、オンラインによる調査を実施して調査地で活動している女性グループのおおまかなデータを収集をして研究をすすめ、2022年度は、現地調査による具体的な活動を見聞した。2021~2022年度は、調査地は過去50年に経験したことのない厳しい干ばつに見舞われており、多くの人びとの生活基盤である家畜群が著しく縮小し、ウクライナ危機による物価の上昇によって、人びとの生活は困 窮の一途をたどっていた。このようななか、地道に小規模な活動を重ねて、それぞれの資金を出し合って貯蓄(テーブルバンキング)することによって生活を支えることができた。こうした実績により、男性が女性グループの活動を肯定的に評価し始めていた。中には実際に加入する男性もあった。2023年の現地調査では、こうした実績によって、規模を拡大したグループと、資金繰りがうまくいかずに消失したグループの明暗が明らかになった。また、特定のメンバーが複数のグループに加入し、グループの優先順位づけをおこなっている実態も明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査によるデータ収集を研究の基盤としている本研究課題において、2020-2021年度に現地調査を実施できなかったことは大きな遅れに結びついた。しかし2022年度、2023年度は、その間に実施したオンラインによるデータ収集と、それをフォローする形での現地調査、さらに、現地調査と現地調査の間にもオンラインによる継続調査も実施することができた。このため、遅れをある程度取り返すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に取得したグループのメンバーシップの移動データを分析考察することで、女性グループが牧畜民の日常と干ばつなどの危機的状況の双方においてどのような役割を演じ、それがジェンダー役割の変容にいかに作用しているのかについて統合的な考察を進める。
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