2023 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカのサバンナ地帯における植物の採集、流通、消費:人―植物関係の超地域的展開
Project/Area Number |
19K12534
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
八塚 春名 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (40596441)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エスノボタニー / ローカル野菜 / フードバリューチェーン / 開発と植物利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は7月~8月にタンザニアで現地調査を実施した。また、これまでに得たデータをまとめ、アフリカにおける植物の採集、流通、消費について、最終的な考察をおこなった。 現地調査では、タンザニアのドドマ州において大規模なダム建設計画が進んでいることに着目した。このことは植物の採集や消費に大きな影響を与えうるという意味において、本研究の基盤をゆるがす問題だと捉えている。つまり、ダム建設により人びとの移住が進むなか、植物の採集場所が変化することはもちろんのこと、ダム建設に伴い道路整備が進めば地域の野生植物の流通可能性が拡大するばかりか、その代替となるさまざまな野菜が他地域から入ってくるなど植物利用や食生活にさまざまに変化を及ぼしうるということが明らかになった。この件は日本アフリカ学会第60回学術大会において発表した。 2023年度後半は、これまでの研究成果をまとめ、植物の採集、流通、消費について、以下の考察をした。タンザニアにおける調査から2パターンの植物利用がみられた。ひとつ目の植物は、複数地域で採集、流通、消費され、流通の経路もさまざまにみられるが、他方、その調理や食べ方などには地域・民族・個人によってこだわりが異なるため、その販売形態には多様性がみられた。もうひとつは、限られた地域の中でのみ採集・流通・消費がおこなわれ、他地域への広がりはみられない植物で、それゆえ、当該植物や産地へのこだわりが強いというものであった。いずれにせよ、これらはローカルな食の嗜好性が強く表れる「野菜」だからこそ、商品化される植物に地域差とこだわりが生じていることが確認できた。また、都市部におけるそれらの買い手が、近隣村出身の都市居住者であったことから、こうした「ローカル野菜」は都市―農村間の人の移動をひそかに支える重要な資源であると考察した。これは、第29回生態人類学会において発表した。
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