2019 Fiscal Year Research-status Report
「戦争花嫁」移民およびその子供と孫世代に関するオーラルヒストリー研究
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19K12535
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
土屋 智子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (50611000)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 戦争花嫁 / 女性移民 / 日米文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は「戦争花嫁」と呼ばれた女性移民たちの移住の意義についてその子供世代、孫世代への影響を検討した。本研究の目的は日本からアメリカ本土およびハワイへ渡った「戦争花嫁」移民の子供および孫世代がルーツのある日本をどのように理解しつながりを持っているのか、について調査をすることと、国外に渡った「戦争花嫁」移民およびその子孫が持つトランスナショナルな価値観や自己意識の特殊性や類似性を明らかにすることである。その第一歩として、2019年8月に放映されたNHKBSドキュメンタリー「戦争花嫁たちのアメリカ」を制作されたディレクターにお話を伺う機会を得た。「戦争花嫁たちのアメリカ」では、これまで「戦争花嫁」研究を行ってきた過程で聞き取り調査およびアンケート調査を行った方々、「日系国際結婚親睦会」に所属している方々が多く含まれている。女性たちの語りは、これまで行ってきた研究結果と整合して、結婚、移住、子育ての価値観が表れていた。また、実際に「戦争花嫁」として移住した女性たちだけでなく、彼女たちの子供世代および孫世代への取材も含まれており、戦後アメリカ人兵士と結婚してアメリカへ移住した女性移民だけでなく、その子供および孫世代への影響を視野に入れている点で本研究に意義深いものであった。例えば、子供および孫世代は、彼らが生まれ育ったアメリカの価値観を身に着けながらも、日本から渡った「戦争花嫁」の祖母を日本語で「おばあちゃん」と呼び、孫世代であっても日本食は日常欠かせない食べ物になっていることなど日本のルーツが継承されているところが見られた。ロサンゼルスで行った調査では、「戦争花嫁」移民にお話を伺うことはできたものの、子供および孫世代への調査にまでは至っていないため、今後この知見を発展させ、ロサンゼルスおよびハワイにて先に述べた本研究の目的を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「戦争花嫁」移民の子供および孫世代への聞き取り調査を行うため2020年度の研修期間にロサンゼルスおよびハワイで研修を行う予定であったが新コロナウィルス蔓延による渡航制限により研修が中止となった。聞き取り調査は、発話者が日常を過ごす自宅などリラックスした状態を設定することが必要であるため、実際に現地を訪れることのできる時期を待って聞き取り調査を遂行していきたい。 女性に限定されること、敗戦後という状況での移住であったこと、などの理由から、これまであまり大きく取り上げられることのなかった「戦争花嫁」移民であったが、2019年8月にNHKにてドキュメンタリーが制作され注目されたことは日本人女性移民研究史において重要なことである。その取材および制作を行ったディレクターの方から、ドキュメンタリー制作過程について詳しく伺うことができ、今後の研究に非常に重要な視点を得ることができた。そのような意味で実際の聞き取り調査に向けて有意義な準備ができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は実際に現地に赴き、「戦争花嫁」移民の子供および孫世代への聞き取り調査を遂行する。その際、本研究が目的としている、日本からアメリカ本土およびハワイへ渡った「戦争花嫁」移民の子供および孫世代がルーツのある日本をどのように理解しつながりを持っているのか、について調査をすることと、国外に渡った「戦争花嫁」移民およびその子孫が持つトランスナショナルな価値観や自己意識の特殊性や類似性を明らかにすること、について従事したい。「戦争花嫁」移民の方々はご高齢の方が多く、実際に現地に赴いて聞き取り調査が行える方、また彼女たちの子供および孫世代にも聞き取り調査が行える方は限られるが、アメリカ本土、特にその中でもカリフォルニア州と、それからハワイであれば、このような聞き取り調査が可能であると思われる。 また、アメリカ以外の国々に「戦争花嫁」として移住した方々への聞き取り調査がどのように可能であるかも検討していきたい。
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Causes of Carryover |
昨年度は謝礼を使用する聞き取り調査が遂行できなかったため差額が生じた。実際に現地を訪れての聞き取り調査は最終年度にまで持ち越されるのかもしれないが、聞き取り調査を行い、その方々への謝礼として使用する予定である。
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